遺伝子検査法は、細菌やウイルスの検査に用いられるだけではなく、食品検査などにも用いられており、その需要は高まっている。遺伝子検査では、検出対象の遺伝子を選択的に増幅し、その増幅遺伝子(DNA)を検出する。本研究では、増幅DNAを電気的に検出するために、微粒子の誘電泳動現象を利用する。増幅DNAを結合した微粒子に電界によって誘電泳動を生じさせて、微細電極に捕集し、検出する。従来は1時間程度必要であった検出が、この手法により15分程度になった。 本研究の手法は、遺伝子増幅法の一つであるPCR法と組み合わせて行われる。ウイルス遺伝子の検出において、本研究による手法と高感度遺伝子検査法の一つであるReal-time PCR法とを比べたところ、定量可能範囲ではやや劣るものの(10から10^5コピー)、感度は同程度であった(10コピー)。誘電泳動によって微細電極に捕集した増幅DNA結合微粒子のインピーダンス特性を計測したところ、その特性が微粒子に結合したDNAの長さを反映していることが示された。これらによって、本手法が増幅DNAを高感度かつ定量的に測定できるだけではなく、その長さ情報も得られることが示された。すなわち、本手法によって得られる情報は、従来のアガロース電気泳動と同等であり、本手法の簡便性、定量性、低コスト等を考えれば、その代替手段と有用であることが示唆された。 本研究による手法が食品の検査に用いることが可能であることを示すために、食肉の遺伝子検査に用いたところ、微量の混入肉を検出できることが示された。また、遺伝子増幅法と微粒子誘電泳動を一つのデバイスで行う手法についても検討した。 本研究では、微粒子誘電泳動を用いた遺伝子検査法が簡便性、迅速性、コスト、感度等の点で有用であることを示し、ライフイノベーションの進展と安全・安心社会の早期実現に貢献可能であることを示した。
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