研究課題/領域番号 |
15K06113
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
八野 知博 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (50284906)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 計測工学 / 制御工学 / システム工学 |
研究実績の概要 |
本研究は、統計的学習法とベイズ推定の協調による高精度な電力需要予測システムの構築を目的としたものである。本年度は、学習用データに対する対数周辺尤度を評価とし、線形最小二乗法と遺伝的アルゴリズムとのハイブリッド化による、ガウシャンプロセスモデル(予測モデル)の事前分布の決定手法を開発した。次に開発した予測モデルとベイズ推定の枠組みに基づく直接型の多段先予測法を開発した。通常この種の予測問題では、予測値を予測システムの入力側にフィードバックする繰り返し型の形が取られるが、本研究では予測誤差の累積を避けるために、予測器を段毎に作成する直接型の予測システムを構築した。同時に、九州地区の電力需要実績値と気温のデータを収集した。過去の電力需要実績値と気温を入力とし、24時間先まで1時間毎の電力需要予測値とその信頼性の情報を出力とする基礎的な短期電力需要予測システムを開発した。開発した予測システムの妥当性を検証するため、提案手法をMATLABにより計算機上で実現し、シミュレーションにより精度良い予測結果が得られることを確認した。また、従来法では得ることが困難であった電力需要予測値の信頼性の情報が得られ、かつその信頼性の情報値は電力需要実績のデータと照らし合わせて妥当であることが明らかになった。本手法によれば、事実上、電力需要の上下限が同時に見積もられることになり、最大電力需要値を想定した電力供給計画策定が可能となる意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究実施計画のほとんどの項目を実施し、その一部は学術講演会で公表できていることから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究において、基礎的な短期電力需要予測システムを構築できたことから、今後は、この基礎的な予測システムの予測精度をさらに改善していく方向で研究を推進していく。具体的には、平成27年度では平日と土日祝日の区別なく予測システムを構築していたが、実際には平日と土日祝日とでは電力需要の傾向がかなり異なるため、平日用の予測システムと土日祝日用の予測システムを別個に構築することにより、予測精度改善を図る。また、予測システムの学習にカッコウの托卵行動を模擬したカッコウ探索アルゴリズムを適用することによる予測精度について検証する。さらに、日射量や湿度など電力需要に影響を与えうる他の気象情報値を予測システムの入力とした場合の予測精度についても検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初国際会議発表のための旅費を見込んでいたが、次年度以降に発表する予定としたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
開発した短期電力需要予測を実現するための信号処理言語MATLABを平成27年度に購入したことから、平成28年度にはパーソナルコンピュータとその周辺機器を購入して研究遂行のためのシミュレーション環境を向上させる。また、研究成果を発表するための国際学術会議発表旅費や、本研究の基盤となる最適化アルゴリズム等の研究動向調査のための国内学会参加旅費等に充てる。
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