本研究は、統計的学習法とベイズ推定の協調による高精度な電力需要予測システムの構築を目的としたものである。 平成27年度は、学習用データに対する対数周辺尤度を評価とし、線形最小二乗法と遺伝的アルゴリズムとのハイブリッド化による、ガウシャンプロセスモデル(予測モデル)の事前分布の決定手法を開発した。さらに、過去の電力需要実績値と気温を入力とし、24時間先まで1時間毎の電力需要予測値とその信頼性の情報を出力とする基礎的な短期電力需要予測システムを開発した。 平成28年度の研究では、平日と土日祝日とでは電力需要の傾向がかなり異なることを考慮し、平日用の予測システムを構築する際は平日のみの学習用データを用いて学習し、土日祝日用の予測システムを構築する際は土日祝日のみの学習用データを用いて学習することにより、別個に予測システムを構築し、これまでの予測手法と比べて予測精度が改善されることを示した。また、予測システムの学習にカッコウの托卵行動を模擬したカッコウ探索アルゴリズムを適用することによる予測精度について、他の最適化アルゴリズムを適用した場合と比較して検証した。 研究最終年度の平成29年度は、予測システムを構築する際の学習用データに予測対象の前年のみならず、過去複数年に渡る電力需要実績値や気温を用いる手法を提案し、複数年に渡る学習用データを用いる方が予測精度の向上が見られることを示した。 本研究の成果により、事実上、電力需要の上下限が同時に見積もられることになり、最大電力需要値を想定した電力供給計画策定が可能となる意義がある。
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