• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

脳科学に寄与する新指標の提案と脳機能評価法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 15K06120
研究機関東海大学

研究代表者

栗田 太作  東海大学, 情報教育センター, 准教授 (10547970)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードNIRS信号の拍動成分 / 見かけの動脈血酸素飽和度 / 血液血行動態反応 / フーリエ変換 / 振幅スペクトル / 頭皮血流 / 独立成分分析
研究実績の概要

昨年度は、頭皮除去モデルにおける、酸素化ヘモグロビン(HbO)および脱酸素化ヘモグロビン(HbR)濃度長の経時変化(NIRS信号)の拍動成分が十分に抽出できなかった。そのため今年度は、NIRS装置の信号対雑音比(S/N比)の更なる向上に取り組んだ。製造メーカにより、ファームウェアの更新やハードウェアの実装などの技術供与を受けた。サンプリング時間を5.12×10^-3 secに、量子化ビット数を18ビットとし、測定性能を高めることで、解析精度が期待できる。また、光学的なS/N比向上にも取り組んだ。ラットに用いている光ファイバーケーブルは、装置本体の送受光センサーに接触させ、小さい口径に変換するため、その境界面で放射束の減衰が起こる。ファイバー径を1.0mmφから1.5mmφに拡幅することで、放射束は実測で約2倍となった。頭皮血流の影響を検討するため、頭皮剃毛モデルでは3チャンネル(4mm間隔×3)で、頭皮除去モデルでは2チャンネル用(3mm間隔×2)で計測ができるように、分離距離が異なる2種類のアタッチメントを作製し、マニピュレーターと組み合わせることで、脳賦活領域上の頭皮や頭蓋窓で微調整しながら精度よく設置できた。
NIRS信号のS/N比は、旧システムと比べ、頭皮剃毛モデル、頭皮除去モデル共に向上したことを認めた。頭皮除去モデルの最適オプトード分離距離は、血液血行動態反応を踏まえ、6mmであった。NIRS信号を隣接平均法によりスムージングを施すとHbO波形の拍動成分が概ね認められた。HbO拍動成分の周期は、ラットの心拍数と合致した。しかしながら、HbR波形の拍動成分は小さく、明確な周期性を認められなかった。結果として、見かけの動脈血酸素飽和度(App-SpO2)値は、ヒゲ刺激プロセスにおいて、リアルタイムに有意な変化を検出することが困難であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

App-SpO2値は、ヒゲ刺激プロセスにおいて、リアルタイムに有意な変化を検出することが困難であった。そこで、HbOとHbR波形の拍動成分を時間領域から周波数領域へ解析法を変更した。30秒毎の時間平均として、フーリエ変換を行い、得られた振幅スペクトルからHbOとHbRの拍動成分を評価した。30秒毎のHbOとHbR拍動成分の振幅スペクトルのピークは、同一周波数で、ラットの心拍数(5-8Hz)に対応した。HbOとHbRのピーク強度は、HbRに比べ HbOが大きかった。HbRのピーク強度は、ノイズレベルに近い状態ではあるが、検出可能であった。今後、HbOとHbRのピーク解析からApp-SpO2値を算出し、周波数領域のApp-SpO2として、血液血行動態反応との関係を吟味したい。
当初予期していないこととして、血液血行動態反応に起因するNIRS信号の変化は、従来、ヒゲ刺激時にHbO濃度長が徐々に増加し、鏡像的にHbR濃度長が減少して総ヘモグロビン(HbO + HbR)濃度長が増加する経時変化を示す。しかし、ある頻度でこのパターンとは異なる経時変化が認められた。すなわち、ヒゲ刺激時にHbO濃度長が急峻に増加し、鏡像的にHbR濃度長が急峻に減少する経時変化のパターンや、HbOが減少しHbRが増加する経時変化の逆パターンである。文献調査の結果、吸入麻酔(1.25%イソフルラン、30%O2 -70%N2O)の影響であることが判明した。そこで、脳循環代謝関連の動物実験に用いられている、α-クロラロース(50mg/kg)による腹腔内麻酔を導入した。ラット前処置では、適切な吸入麻酔(3-4%イソフルラン、30%O2)で行い、前処置後、α-クロラロースの腹腔内麻酔に切り替えNIRS計測を行うこととした。麻酔をα-クロラロースに換えてから、従来とは異なる経時変化のパターンは、減少した。

今後の研究の推進方策

NIRS信号のHbOとHbR波形の拍動成分の解析方法を、時間領域から周波数領域へと研究計画を変更する。現在、NIRS信号の30秒毎の時間平均としてフーリエ変換を行い、得られたHbOとHbRの振幅スペクトルから、ピークの位置や強度、そして面積を精査しているが、今後はHbOとHbRのピーク解析を確立し、周波数領域のApp-SpO2値を算出して、血液血行動態反応との関係を吟味したい。更に、時間平均を30秒毎より短くし、短時間フーリエ解析として、App-SpO2値を評価していきたい。
周波数領域App-SpO2値の有用性が確認でき次第、本研究計画の今後の課題である「頭皮血流の影響を受けたNIRS信号は、独立成分分析により脳内のNIRS信号に再生できるか検討する」、そして「頭皮血流の影響を短い分離距離の検出部を加えたオプトードで検討する」、更に「App-SpO2は脳内のどの血管成分に由来するのか検討する」に移行する。

次年度使用額が生じた理由

進捗状況がやや遅れ、消耗品を購入しなかったため。

次年度使用額の使用計画

平成29年度研究計画を実施するための、消耗品に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 研究紹介 ー近赤外分光法(NIRS)ー2017

    • 著者名/発表者名
      栗田太作
    • 学会等名
      NPO法人「広域連携医療福祉システム支援機構」脳機能活性化分科会
    • 発表場所
      東海大学伊勢原キャンパス
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-15
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi