研究課題/領域番号 |
15K06122
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石川 博康 日本大学, 工学部, 教授 (20536495)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 無人航空機 / ドップラーシフト / 位置検出 / 飛行位置誤差 / 位置検出精度 / 測位対象エリア |
研究実績の概要 |
無人航空機システム(UAS)では、時速40~100km/hで高度150~1,000mの上空を無人航空機(UAV)が旋回することを想定しているため、UAVに通信機能を搭載した場合、UAV-送受信機間の視線速度の変化によって、送受信信号の搬送波周波数にドップラーシフトが生じる。このドップラーシフトを複数のUAVに対して観測することにより、通信用端末を保有するユーザの位置を検出することが可能となる。 今年度は、UASを対象とする位置検出システムにおいて、1機のUAVを用いて異なる時間にドップラーシフトを観測して最小2乗法により位置検出を行う手法を新規に検討すると共に、UAVの航行制御誤差が位置検出精度に与える影響について計算機シミュレーションにより評価した。 計算機シミュレーションでは、UAVが一定の高度で同じ場所を中心とした等速円運動を行っているものと想定し、簡易的なモデルとしてUAVの旋回半径に一定の誤差が固定値として生じているものとした。シミュレーションの結果、UAVとユーザの位置関係や飛行位置誤差の大きさに応じて位置検出精度が変化することを確認し、その値を統計的に解析した。 次に、 2機のUAVを平行して飛行させる場合を想定し、UAVの飛行位置誤差が位置検出精度に与える影響を計算機シミュレーションにより評価すると共に、測位対象とするエリア内で測位精度が良好となるUAV間距離を検討した。その結果、4km四方のエリアを対象として高度200mを時速100km/hで2機のUAVが平行飛行する場合、その間隔を2,000~4,000mで設定することが望ましいこと、また、最適値は2,800mの場合となることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度となる平成27年度は、UAV-地上端末間に生じるドップラーシフトを利用した位置検出手法を提案すると共に、特性評価用のシミュレーションプログラムを計算機上で作成し、下記のように二段階に分けて特性評価を実施することを想定していた。 1)1機のUAVを用いた位置検出手法の性能評価:UAVを用いた災害対策用ワイヤレスネットワークのシステム構成を検討し、UAVのスペックや運用条件、無線リンクの要求スペック等を明らかにする。それに基づき、最小構成となる1機のUAVを対象として、UAVの高度や航行速度、周回運動に伴って変化するユーザ受信点におけるドップラーシフト量を用いて位置検出を行う手法を提案する。また、ノートPC上にシミュレーションプログラムを作成し、UAVの高度や航行速度、ユーザとの位置関係を変化させながら、提案手法の有効性を検証する。 2) N機のUAVを用いた位置検出手法の性能評価:複数のUAVが同時に飛行することを想定して、UAVの機数をN機(N>2)に拡張した場合のユーザ位置検出アルゴリズムを考案し、1)で作成したシミュレーションプログラムの拡張を図る。 第1ステップについてはほぼ予定通りに進展した。一方、第2ステップではUAVの機数をN機に拡張することを想定していたが、2機のUAVの飛行方法を変えて評価することを優先した。具体的には、従来、UAVを一定半径で周回させていたが、人命救助を優先する場合にはUAVを平行飛行させることが現実的と考えられ、そのようなモデルでシミュレーション評価を行い、測位精度特性を面的に評価した。なお、シミュレーションを実行するノートPCとシミュレーション評価用のソフトウェアツールとしてMATLAB/Simulinkを予定通り調達すると共に、研究成果を電子情報通信学会衛星通信研究会およびワイドバンドシステム研究会等において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究を踏まえ、作成したシミュレーションプログラムの拡張を図る。具体的には、N機(N≧1)のUAVを対象として、ア)UAVの航行位置の制御誤差、イ)ドップラーシフト量の観測誤差、の2項目の影響を詳細に評価するため、プログラムの改修を図り、UAVとユーザの位置関係やUAVの飛行速度、飛行高度などの条件を変えながら位置検出精度の特性評価を行う。シミュレーション評価結果より、位置検出精度と誤差要因との相関関係を解析し、実用性を考慮した上で許容できるUAV航行位置の制御誤差やドップラーシフト量の観測誤差を明らかにする。以上の検討結果を踏まえ、UAVを用いたユーザ位置検出システムの実用的なスペックとして、UAVの旋回半径、航行速度、航行高度、複数のUAVの位置関係、位置検出の対象とするエリア構成等を提案する。 さらに、ドップラーシフトの検出精度を向上する送受信技術を検討するための前段階として、ソフトウェア無線装置にトーン信号の発生機能をプログラムとして実装する。また、ソフトウェア無線装置からトーン信号を2~5GHz帯の無線信号として発生させ、スペクトルアナライザで所望通りの周波数が発生できることをケーブルによる有線接続により確認する。 以上の研究を進めるため、送信機用のソフトウェア無線装置を2台、同装置の計測・制御アプリケーションソフトウェアライセンスを1ライセンス、それぞれ調達する。また、研究成果を電子情報通信学会衛星通信研究会と総合大会にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が当初予定より高額となり、旅費等に使用することができなかったため残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表時の別刷り代として使用する予定である。
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