本研究では、災害時や緊急時、山岳地域などにおける遭難時など、人命救助を目的としたUAS(無人航空機システム)を利用したユーザ位置検出手法を提案し、様々な飛行モデルにおいてシミュレーション評価を実施してきた。具体的には、N機(N=1~3)のUAVを介して観測されるドップラーシフトを用いて最小2乗法によりユーザの位置検出を行う手法を提案し、位置検出精度を計算機シミュレーションによる評価を実施した。また、複数のUAVの飛行経路や位置関係によって位置検出精度が大きく変化することから、ドップラーシフト分布を用いてUAVの飛行経路やUAVの位置関係が位置検出精度に与える影響を定性的に解析し、シミュレーション結果と比較検証を行った。 最終年度は、UAVの飛行条件とユーザとの位置関係が位置検出精度に与える影響を表す指標として、ドップラーシフト観測値により形成される双曲面上のユーザ位置における勾配ベクトルの内積の余弦の絶対値を利用することを新規に提案すると共に、評価対象エリア(8km四方)内における測位精度指標を導出し、シミュレーションに基づく位置検出精度との相関関係を明らかにした。また、2機のUAVを利用する位置検出手法において、①周回飛行モデル、②8の字飛行モデル、③直線飛行モデルを対象とするシミュレーション評価を行い、提案した測位精度指標を用いることによりUAVの適切な初期配置モデルを明らかにした。 さらに、最小2乗法の初期値候補として、ドップラーシフトにより描かれる2つの双曲線の交点を直線近似で求め、それらをドップラーシフトの正負で判別するアルゴリズムを新規に考案し、特許化を図ると共に、モンテカルロシミュレーションによる基本特性評価を行った。その結果、提案アルゴリズムが有効に動作し、位置検出の自動化を高精度に実現できることを明らかにした。
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