研究課題
本研究は脳波解析などの微小な生体信号に混入する筋電位アーチファクトを取り除き,微小な信号を抽出することを目的としている.従来,適応フィルタやICAなどを用いて脳波などに混入した筋電位を除去する方法が提案されているが,筋電位が畳込まれるような場合には決定打がないのが現状である.そこで,筋電位アーチファクトが混入していると思われる妊婦母体腹壁生体電位を主な試金石として,ここから微小な胎児心電位を精度よく抽出することを目標に本研究を実施した.平成27年度は協力機関である奈良県立医科大学において妊婦腹壁生体電位計測試験を実施し,微小な胎児心電位を分離・抽出するためにIVA(Independent Vector Analysis)を用いた方法を提案した.IVA法における時間-周波数変換のための短時間フーリエ変換窓幅パラメータを変化させた結果,データに独立な最適値の存在が明らかにした.提案手法は一般的なICA法に比べて,胎児心電位の検出率が高く,特に通常のICAを用いた胎児心電位検出率が50%~70%の検出率であった場合,提案手法による胎児心電位検出率は70%~80%へ向上した.IVAを用いた提案手法により微弱な生体信号である胎児心電位の検出率が向上したが,それでもなお胎児心電位検出が困難な場合がある.平成28年度はその原因が真に筋電位アーチファクトによるものであるのかを確認するために,妊婦腹壁上で観測される胎児心電位分布を推定する方法を開発した.その結果,現状の計測環境においては母体腹壁上に現れる胎児心電位の大きさが10μVを下回ると胎児心電位検出率が極端に低下することが明らかになった.平成29年度は平成28年度に開発した母体腹壁上に現れる胎児心電位分布を推定する方法を応用して,微弱な胎児心電位計測に最適電極配置に関する研究を実施し,効果的な電極配置を明らかにした.
すべて 2017
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International Journal of Bioelectromagnetism
巻: 19(1) ページ: 6-10
ヒューマンインタフェース学会論文誌
巻: 19(2) ページ: 189-197