研究課題/領域番号 |
15K06127
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
阿部 恒 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物質計測標準研究部門, 主任研究員 (20356372)
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研究分担者 |
橋口 幸治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物質計測標準研究部門, 研究員 (00712506)
天野 みなみ 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物質計測標準研究部門, 研究員 (80586321)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 湿度 / ppb / 高感度 / SIトレーサビリティ |
研究実績の概要 |
水分(水蒸気)は大気中に大量に存在し、一度装置等の内部へ入り込むとその高い吸着性によって除去することが非常に困難なため、高純度ガスや高真空を必要とする科学実験・製造プロセスでは、不純物としてよく問題にされる物質である。それらの分野では、微量レベルでの水分管理が必須であり、それを確実に実行するには、ガス中微量水分の高精度な測定が不可欠となる。しかし、水分のモル分率が10 ppb以下の領域では、信頼性の高い計測法がいまだ十分確立されていない。本研究では、2波長のキャビティリングダウン分光法を使った高感度で高精度な微量水分計を開発し、国際単位系(SI)へのトレービリティが確保された実験に基づいてその性能評価を行うことで、サブppbレベルでも測定可能な信頼性の高いガス中微量水分計測法を確立する。 試験用ガスとしては、微量水分の一次標準発生装置で生成させたガスを用いる。これによって、SIトレーサビリティが確保された条件での実験が可能となる。 本研究が成功すると、サブppbレベルでの信頼性の高いガス中微量水分計測技術が確立されることになり、計測学(Metrology)の観点から極めて意義深い。本研究による成果は、高純度ガスを必要とする全ての研究分野、微量水分測定を必要とする全ての研究分野へと波及すると考えられる。例えば、半導体製造分野で材料ガスとして使われる高純度ガス中の残留水分評価や、バリアフィルムのバリア性評価に対する貢献が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず最初に現存の1波長CRDSを使って、レーザー周波数とキャビティの固有周波数を一致させる技術の選択を行った。今回は、(1)レーザー周波数変調法、(2)波長計制御型(当グループで新たに開発)、の2つ方法を試した。(1)に比べて(2)の方法の方が、2つの周波数を一致させる技術としては優れており、単位時間あたりの測定回数が(1)は40回程度に対して、(2)は200回程度と5倍近くなることが分かった。しかし、(2)の方法は室温の変化に敏感で長期間の測定には現状では向いておらず、また光学系の調整にも手間がかかるので、今回のデュアルCRDSの開発には(1)の方法の方が適しているとの結論に至った。 その後(1)の方法によるデュアルCRDSの開発を開始した。2台のダイオードレーザーの切り替え方法については、(a)それぞれ複数回測定してから切り替え、(b)1回測定ごとに切り替え、の2つを試した。今回専用の制御用プログラムを開発したことで、どちらの切り替えでもスムーズに測定を行うことができた。ノイズの低減化の観点からは(b)の方法が適しており、また、単位時間あたりの測定回数においても、(b)の方法を用いても20回/sとなっており、これは1台のレーザーあたりでは40回/sとなり、上記の1波長CRDSと同等となっている。従って、(b)の方法を採用することにした。 微量水分の一次標準を使った実験を行い、積算時間30 s程度でノイズの標準偏差0.08 ppbを実現した。これは当初の目標であった積算時間10分間で0.1 ppbを満たすものであり、さらに30 s積算で実現できたとのことで、微量水分のリアルタイム測定に使用できることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きSIトレーサブルな微量水分の一次標準を使った実験を行う。10 ppb-1 ppmの範囲で水分濃度を急激に変化させた実験を行い、指示の応答性を調べる。現在は2つのレーザーの周波数をベースラインと吸収線のピーク位置に固定して測定を行っているが、今後はピーク測定用レーザーの周波数を掃引して、吸収スペクトルの測定を行う。そのための測定プログラムを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
時間的な制約のため、昨年度の国際会議参加が1回減り、その分の出張旅費を使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議参加の旅費に使用予定。
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