電力フィードバック進行波型熱音響発電機の実用化を目指して、(i)発振余裕を拡大しコアの段数低減・装置の小型化を図るため、電力フィードバック回路にコイルを追加する効果と、(ii)廃熱源の温度変動に対してロバストな熱音響発電機を実現するため、負荷抵抗を動的に変化する制御手法を検討した: まず(i)について、電力フィードバック回路に適当な容量(リアクタンス)のコイルを挿入すると、発振余裕が拡大され、発振時の圧力、音響パワー、電力が増大すること[音響学会2017秋]、発振余裕を最大化するリアクタンスの最適値が存在すること[音響学会2018春]を実験及び解析により示した。ただし、リニアモータの効率とリアクタンスの関係は実験と解析で異なる傾向を示しており、コイル中の抵抗を考慮して解析を行うこと等が今後の課題である。 次に(ii)について、熱音響エンジンの臨界温度比推定に用いている定常発振制御系の安定性解析を非線形制御理論に基づいて厳密に示す[自動制御連合2017(小林)]とともに、振動発電において負荷を動的に変化させる定常発振制御系の安定性を示した[自動制御連合2017(永井他)]。これを熱音響発電機に応用し、温度変動に対して負荷を動的に変化させることにより、発振時の圧力を一定に制御できることを実験的に示した[機械学会2018(井上・小林)]。さらに振動発電において、振動体の振動が一時的に弱まった場合でも、エネルギー回生により振動体の振幅を目標値に維持できることを実験的に示した[機械学会2018(稲田他)]。ただし、回生は外部電源で模擬しており、LC回路を利用したエネルギーの貯蔵、熱音響発電機への応用が今後の課題である。 最後に、電力フィードバック進行波型発電機の開発経緯について報告した[応用物理学会2018]。本発電機は長い導波管が不要で小型化が可能な新しい発電機として認知されつつある。
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