微分可制御性とは任意の初期状態を無限小時間区間上で原点に遷移可能であることを意味する。一方、可制御性とは任意の初期状態を有限時間区間上で原点に遷移可能であることを意味する。線形時不変システムでは微分可制御性と可制御性は一致するが、線形時変システムでは両者は異なる概念となる。筆者らは線形時変システムの状態空間の構造を調査するために、可制御性を基礎としたカルマン正準分解の理論を構築してきた。微分可制御性を基礎として線形時変システムの状態空間の構造を調査することも考えられるが、微分可制御性はシステムに対して定義された概念であり、状態空間の構造を調べるには適さない。そこで線形時変システムに対して微分可制御部分空間の概念を導入した。ある初期状態が無限小時間区間上で原点に遷移可能であるときに微分可制御な状態であると定義する。微分可制御な状態の集合は線形空間としての構造を持つので微分可制御部分空間と呼ぶ。微分可制御部分空間を解析する際に、係数行列が解析的であるか否かに応じて計算方法を明らかとし、区分解析的なシステムに対して、解析的な区間上での計算方法と端点上での計算方法をそれぞれ提案した。さらに可制御部分空間との関係を調べ、線形時変システムの独立変数に関する局所構造と大域構造の関係を明らかとした。とくに、微分可制御部分空間が座標変換に依存しないことや、係数行列が解析的な時間区間上において微分可制御部分空間が状態遷移行列の時間発展に関して不変であることを示した。
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