本研究の目的は,周囲の環境に合わせてロボット群が分散的に群れの形を変え,群れの一部が分離することなく目標地点に到達させる制御手法の確立に向けて,以下の課題に取り組むことである.(i) 操作者が1台のロボットに目標経路を与えると,ロボット群が通信による情報交換を行うことなく,ネットワーク構造の連結性を維持する手法,さらに周囲の障害物にあわせて群れの形を変え,狭隘な環境でも目標経路に追従する分散的な制御手法の構築,(ii) ロボット群が物体の周囲を取り囲み,ネットワーク構造の連結性を維持しながら群れの形を変えることにより,効率的に物体を運搬し,目標経路に追従する手法の構築,(iii) 移動ロボットへの実装と実験検証.本年度は,(ii)における協調運搬アルゴリズムの提案を行った.提案手法では,ロボット間のデータ通信を行うことなく,群れのネットワーク構造の連結性を維持し,効率的に物体を運搬できる配置に隊形を変えながら協調的に運搬を行うことを目的としている.また,(iii)に関連して,(i)(ii)で構築したアルゴリズムの有効性の検証を行った.さらに,検証実験を踏まえ,(i)のアルゴリズムの問題点の解決に取り組んだ.具体的には,各ロボットの移動方向の決定が適切でないために道幅の狭い経路上で,ロボットが動けなくなってしまう問題,および,近傍ロボット間の視線(Line-of-Sight)を維持することを保証するために移動速度が過度に制限されてしまう問題の改善を行った.
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