研究課題/領域番号 |
15K06140
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高井 重昌 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60243177)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 制御工学 / 離散事象システム / スーパバイザ制御 |
研究実績の概要 |
不確かな環境下で動作する離散事象システムにおいては,その状態遷移に非決定性が生じ,そのような非決定性を考慮した制御が必要となる.本研究では,非決定性離散事象システムの双模倣制御,模倣制御について考察し,不確かな環境下で動作する離散事象システムに対する実用的なスーパバイザ制御法を確立することを目的とする. 離散事象システムの制御においては,一般に,タスクの終了などを表す目標状態への到達可能性を保証するノンブロッキング性が重要である.そこで,非決定性離散事象システムに対して,制御されたシステムが制御仕様に模倣され,かつノンブロッキングとなるようなスーパバイザを構成する問題に取り組んだ.そこで,対象システムで生起する事象と現在の状態が観測可能であるという仮定のもとで,そのようなスーパバイザが存在するための必要十分条件を導出し,その条件の判定方法を提案した.さらに,スーパバイザの存在条件が成り立つ場合において,スーパバイザの構成法を開発した.従来の模倣制御に関する研究では,制御されたシステムがノンブロッキングであることは要求されておらず,本研究の結果を用いることで,離散事象システムの制御において重要なノンブロッキング性を保証することが可能となった. さらに,不確かな環境下で動作する離散事象システムの制御系の信頼性を高めるため,システム内での故障事象の生起を検出するための診断機能に関する研究にも取り組んだ.そこで,各ローカル診断器が,他のローカル診断器の判断を推論し,その結果に基づき自身の判断を行うような分散型診断システムにおいて,任意の故障事象の生起をある有限ステップ内で検出できるための必要十分条件を明らかにし,その条件の判定方法を提案した. これらの成果は,不確かな環境下で動作する離散事象システムの高信頼な制御系設計に関する基礎理論に貢献するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には,ラベル付き遷移システムとしてモデル化された離散事象システムの双模倣制御において,制御器の構成法,その制御器が双模倣制御問題の解となるための条件などの成果が得られ,これらの成果は学術論文誌IEICE Transactions on Fundamentalsに掲載されている.平成28年度には,複数のサブシステムから構成される非決定性離散事象システムの模倣制御問題に関して,各ローカルスーパバイザがサブシステムで生起する事象と現在の状態が観測可能であるという仮定のもとで,最大許容スーパバイザが分散スーパバイザとして構成できるための条件を導出した.この成果は学術論文誌IEICE Transactions on Fundamentalsに掲載されている. そして,平成29年度では,非決定性離散事象システムの模倣制御問題において,対象システムで生起する事象と現在の状態が観測可能であるという仮定のもとで,タスクの終了などを表す目標状態への到達可能性を保証するノンブロッキングなスーパバイザが存在するための必要十分条件を明らかにし,その条件の検証方法を開発した.これらの成果は学術論文誌IEICE Transactions on Fundamentalsに掲載されている.さらに,不確かな環境下で動作する離散事象システムの制御系の信頼性を高めるための診断機能に関して,各ローカル診断器が,他のローカル診断器の判断を推論し,その結果に基づき自身の判断を行うような分散型診断システムにおいて,任意の故障事象が検出できるための必要十分条件,その条件の判定方法などの成果を得た.これらの成果はシステム制御分野ではトップクラスの学術論文誌IEEE Transactions on Automatic Controlに掲載されている. よって,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究において,非決定性離散事象システムの模倣制御問題に関するこれまでの成果は,対象システムで生起する事象と現在の状態が観測可能であるという仮定のもとで得られている.しかし,センサ配置の物理的制約などのため,対象システムの状態が常に観測可能であるとは限らない.そこで,事象の生起の観測に基づき,現在の状態を推定する機構であるオブザーバを用い,状態の観測を必要としないスーパバイザの構成アルゴリズムの開発を行う.そして,構成したスーパバイザの許容性などの性能評価,開発したアルゴリズムの計算量評価を行う.これらの得られた成果は学術論文誌において発表する. また,本研究でこれまでに得られた理論的成果に基づき,スーパバイザの存在性を判定するための検証ツール,スーパバイザの設計ツールの開発を目指す.さらに,例題へ本研究の成果を適用し,その有効性を確認する. なお,平成30年度は本研究の最終年度であるため,研究成果全体の評価を含め,本研究の総括を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に関する成果を発表した論文が論文誌IEEE Transactions on Automatic Controlに採録されることが平成29年度に決定したが,掲載時期は次年度の平成30年度である.また,本研究課題に関する成果を平成30年度にイタリアで開催される国際会議The 14th International Workshop on Discrete Event Systemsにて発表する予定である.そのために,補助事業期間の延長を申請し,次年度使用額が生じた. そこで,次年度使用額を上述の論文の掲載に必要な論文掲載料,国際会議の参加に必要な外国旅費等に使用する計画である.
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