研究実績の概要 |
本年度の実績は,これまでの研究によって得られた完全分散制御法の技術を広域センサネットワークに適用することで,提案法の有効性を示したことである.具体的には,ロボットに搭載した移動式のセンサ群を対象にし,フィールドへの適切な散開の仕方と決められたフォーメーション形状の維持方法について検討した. まず,フィールドへの散開の仕方として,フィールド上の重要度に応じて散開するセンサの密度を決めることにした.その際,一部の重要な部分に多くのセンサが集まることがないように,センサ群の位置の分散を所望の値にする方法を提案した.この分散の値を求めるにはセンサ群全体の情報を必要とするが,これを分散的に求めるために提案した完全分散制御法を利用した.さらに,シミュレーションによって,100台以上のセンサが一箇所に集まることなく適切に複数の重要点を覆えることを確認した.本成果は,国際誌 IMA Journal of Mathematical Control and Information において発表した. 次に,センサ群が決められたフォーメーション形状を維持するための方法について検討した.ここでは,個々のセンサが直接得る近隣センサの距離情報のみを利用する分散制御手法を提案した.さらに,オムニタイヤによって移動するロボット6台を製作し,提案法を用いて適切にフォーメーションを形成できることを,実験によって確認した.本成果は,国際誌 International Journal of Control, Automation and Systems において発表した. 今後の課題としては,適切に散開したセンサ群を用いてフィールド全体の観測値の分布を推定する方法の検討や,それによる土壌の温度分布の多点測定などの実験検証がある.
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