研究課題/領域番号 |
15K06146
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
池田 建司 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (80232180)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 部分空間同定法 / 分散解析 / 一致推定値 / gap (開き) / 半正定値計画問題 / カルマンフィルタ |
研究実績の概要 |
部分空間同定法の分散解析手法の確立を目指してgapに基づく特異部分空間の推定誤差を導出し, それを用いて, PO-MOESP法におけるシステム行列推定値の誤差解析や周波数領域での誤差解析について一定の成果を得ている. また, 閉ループ同定への拡張も広島大学の田中秀幸教授とともに進めている. 推定値の分散を推定するためには, システム行列だけでなく, イノベーションモデルにおける, カルマンゲインやイノベーション過程の共分散行列が必要である. そこで, イノベーションモデルの一致推定を目指して, 新しい推定手法を提案している. H28年度からの差分は, カルマンゲイン・イノベーション過程の共分散行列の一致推定値は半正定値計画問題(SDP)を解くことによって求めることができることを示した点である. これにより, 非線形最適化手法に頼ることなく効率的に推定できるようになるだけでなく, 解の存在性, 最適解への収束性, 推定値の一致性などを保証することができるようになった. 具体的には, カルマンゲインとイノベーション過程の共分散行列を推定する問題は, あるSDP問題として定式化されるが, その解は一意には求まらないことが判明した. しかしながら, あるランク条件が満たされれば, 推定された雑音共分散からカルマンフィルタ問題を解くことによってカルマンゲインとイノベーションが艇の共分散行列を一意に求めることができることがわかった. またそのランク条件は, 設計パラメータをある値以上に選んでおけば, ほとんど至るところで成り立つことも示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書の実施計画では, H29年度に本研究を終了する予定であった. しかし部分空間同定法の分散解析のためには, イノベーションモデルの一致推定が必要なことがわかり, その手法の開発に時間を要しているため, 科学研究費の補助事業期間延長申請を行い承認されている. 当初の計画では, (1) 特異部分空間のgapに関する補題に基づいたMOESP型アルゴリズムの誤差解析, (2) 周波数領域での推定誤差の解析, (3) 閉ループ同定への拡張, の3点を中心に研究をまとめる予定であった. しかし, 上記3点を行うためには, (4) イノベーションモデルの一致推定手法の開発が必要であることがわかった. (4)に関してはほぼH29年度にあらすじができたものの, 精密化やその結果の(1), (2), (3) へのフィードバックがやるべき課題として残っている.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の方針で研究を進める: ・イノベーションモデルの一致推定手法を完成させる. これにより, 最適解の存在と一意性, 収束性, 推定値の一致性なども示す. また, 数値例などを用いて関連手法と比較し, 提案手法の有用性を検証する. ・上で得られたカルマンゲインとイノベーション過程の共分散行列の一致推定値を用いて, MOESP型アルゴリズムにおけるシステム行列の推定値の分散解析, 周波数領域での分散解析を完成させる. ・イノベーションモデルの一致推定手法を, 広島大学田中秀幸教授と共同で, 閉ループ同定へ拡張し, 閉ループ同定手法の分散解析への応用を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
従来非線形最適化問題の解として定式化されていた, イノベーションモデルの一致推定が, 半正定値計画問題の解として解けることがわかったので, 研究期間の延長が必要になった. 新しく提案している一致推定値は, この分野における非常に重要な結果と考えられるため, 他の課題に優先して解決を図った. このため, 当初計画の予定が遅れてしまい, H30年度にずれ込んでしまい, 研究発表の旅費と研究成果報告書の印刷費合計417,590円が未使用となった. 研究発表の旅費と研究成果報告書の印刷費として使用する予定である.
|