研究課題/領域番号 |
15K06149
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
下村 卓 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40243191)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / 人工衛星 / 姿勢制御 / 動力学方程式 / 運動学方程式 / パラメータ依存基底変換 / 制御則・駆動則 / ゲインスケジューリング制御 |
研究実績の概要 |
平成28年度(研究期間の2年目)は,前年度に得られた新たな運動学・動力学方程式表現や包括的LPVモデルに基づき,宇宙機の新しい制御系設計・運用法を提案した.特に,冗長系に対し,姿勢制御とともに,電力蓄積やトルク最適,パワー最適といった付加機能を同時実現するためのことを検討した.一方,多目的駆動則設計という新たなジャンルを切り開き,特異点近傍では特異点回避を優先し,特異点遠傍では他の付加機能を実現するという,多目的駆動則設計法を確立した.零空間の自由度を活用できない駆動系や劣駆動系に対しては,制御則設計において,特異点近傍では特異点回避を優先し,特異点遠傍では姿勢制御を優先するという,新たな制御則設計法を提案した. RW(Reaction Wheel)の場合,入力行列Bが定数行列となり,制御系設計問題が比較的容易であったが,CMG(Control Moment Gyro),DGVSCMG(Double-Gimbal Variable-Speed CMG)の場合に,入力行列Bが定数行列にならないことから,入力行列Bを,スケジューリング変数に依存する部分とそうでない部分に分割し,スケジューリング変数に依存する部分を駆動則側に押し込み,制御則設計を簡単にすることを提案した.このような制御則・駆動則の境界移動について,本年度は本格的に検討した. 本研究課題の派生研究として,制御対象を人工衛星の姿勢制御から,宇宙用探査・衛星追尾用大型パラボラアンテナの姿勢制御,航空機の動揺低減へと広げて検討を進めることができた. 以上の成果を国内外の学術講演会で発表(国際会議6報,国内会議4報)するとともに,学術誌への論文投稿を行い,英文誌1報,和文誌2報の掲載を行った.システム制御情報学会研究発表講演会では,本研究課題の研究代表者と研究指導下の大学院生が連名の論文が優秀賞(SCI学生発表賞)に選ばれた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,研究期間2年目は,,前年度に得られた新たな運動学・動力学方程式表現や包括的LPVモデルに基づき,宇宙機の新しい制御系設計・運用法を提案することになっていたが,冗長系に対し,姿勢制御とともに,電力蓄積やトルク最適,パワー最適といった付加機能を同時実現するための方策を提示することができた.また,制御則・駆動則の境界移動について,本格的に検討することになっていたが,多目的駆動則設計という新たなジャンルを確立する一方,駆動則側でなく,制御則側に特異点回避機能を付与する,新たな制御則設計法を提示することもできた.
以上の成果を国内外の学術講演会で発表(国際会議6報,国内会議4報)するとともに,学術誌への論文投稿を行い,英文誌1報,和文誌2報の掲載を行った.システム制御情報学会研究発表講演会では,本研究課題の研究代表者と研究指導下の大学院生が連名の論文が優秀賞(SCI学生発表賞)に選ばれた.
以上の点から,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
理論的検討はおおむね順調に進展し,一部,当初計画より前倒しで進んだが,制御対象をより広いクラスの機械システムに広げる検討がまだ不十分である.今後は,本研究課題のアイディアがさらに広いクラスの機械システムに適用可能であるかどうかを引き続き検討するとともに,倒立振子・DGVSCMGなどの実機を用いて,実験的検証を行い,本研究課題の提案手法がどこまで広く通用するか,適用上の問題点はないのか,実用性は十分なのか-といった点について,より掘り下げた検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
理論的検討は順調に進み,設計計算・シミュレーションも精力的に行ったが,実験による検証が十分行えなかったため,その分の予算消化が一部次年度繰越となった.
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次年度使用額の使用計画 |
理論的検討・設計計算・シミュレーションに加え,実験による検証を進めるとともに,成果発表を精力的に行いたい.
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