研究課題/領域番号 |
15K06154
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
甲斐 健也 東京理科大学, 基礎工学部電子応用工学科, 講師 (60419471)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 離散力学 / 非線形最適化 / 非線形システム / 集中定数システム / 分布定数システム |
研究実績の概要 |
平成29年度は本研究課題の3年目となり,1,2年目に得られた結果をベースとした新たな展開や応用技術を目標として研究を進めた.本年度において実施した具体的な研究テーマとしては以下が挙げられる. (1)2階偏導関数を含む連続ラグランジアンの場合に対し,自由境界条件下における離散力学の理論展開を行い,自由境界条件下での離散変分の計算と「離散Hamiltonの原理」を適用することにより,「離散Euler-Lagrange方程式」と「離散境界方程式」を導出することができた. (2)自由境界条件下における離散力学のモデルに対し,振幅と制御入力に関する評価関数を導入することによって,離散力学モデルの最適制御問題を有限次元非線形最適化問題へと帰着することができた.この問題は逐次2次計画法を用いることによって比較的大規模な場合でも効率的に解くことが可能である.提案手法を片端固定Euler-Bernoulli梁の振動抑制制御問題に適用し,制御入力によって振動が抑制され,最終的に梁全体が静止状態に安定化されていることが数値シミュレーションによって確認できた. (3)システムのパラメータ誤差や外乱等にも対応できるように,これまでのフィードフォワード型の手法を応用して,モデル予測制御型のフィードバック制御手法を開発した.本制御手法を片端固定の弦やEuler-Bernoulli梁の振動抑制制御問題に適用し,数値シミュレーションにて検証した結果,システムにパラメータ誤差がある場合やシステムに外乱が印加される場合でも,システムが安定化されることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は本研究課題の3年目であり,これまでに築いてきた理論のさらなる発展を目標として研究を進めたが,当初の計画通りにおおむね順調に進展しているといえる.その理由としては以下が挙げられる. (1)2年目に引き続き理論の展開を行った結果,制御手法の応用範囲の拡大が実現でき,実際のシステムにおける適用可能性が広がったといえる. (2)パラメータ誤差や外乱に強いモデル予測制御型の制御手法を開発したことにより,実世界でより利用可能な手法が実現できたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は本来3年間が研究期間であったが,1年間の延長を行い,来年度が最終年度の4年目となる.その理由としては様々な予想外な問題や新しい展開が生まれたことによるが,その具体例を以下に挙げる.今後はこれらの問題点の解決を中心に研究を進めていく計画である. (1)本研究課題で中心的な理論である「離散力学」について,網羅的に理論展開を行ってきたが,研究期間内ではあらゆるすべての状況(システムの次元数や境界条件の有無など)において理論を展開することが難しいことが分かり,さらに数値計算法との関連性における数学的証明においても複雑な計算と深い考察が必要である為,研究期間の延長が必要であることが判明した. (2)提案手法を用いることによって,ロバスト性をもつフィードバック型制御手法を提案することに成功したが,そのためには非線形最適化問題を逐次的に解く必要があり,その為には計算量の低減が必要不可欠となり,計算アルゴリズムの開発ならびに計算機ハードウェアの改良の問題が生じ,このような観点からも研究期間の延長が必要であると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度においては理論展開に関する研究が主となり,実験装置等の購入が少なかった.さらに旅費についても使用が無く,以前の使用計画通りには執行しなかったため,次年度使用額が生じた.次年度予算と合算し,次年度の使用計画に従って進めていく予定である.
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