脚車輪型移動ロボットは脚と車輪を併せ持つ移動体で,脚による複雑な地形の踏破と,車輪による平坦な地形の高速移動を実現可能である.特に月面などの低重力下での運用が期待され,NASA/JPLのATHLETEなどの実証機の研究開発も行われている.しかし,レゴリスで覆われた脆弱な地盤での沈降を回避するために,車輪の荷重配分を考慮しながら,安全で効率の良い運動を実現する高度な制御が必要になる.非線形のモデル予測制御(MPC)は,これらの要求を満たす制御手法で,制約条件を考慮しながら実時間で最適制御を実現する.一方で宇宙空間などの極限環境では,頑強性や信頼性を重視した低速・低電力のCPUを使用する必要があり,一般に計算コストが高いとされるMPCの実装は容易ではない.そこで,本研究では,MPCの計算を脚ごとに行う協調分散型制御により,計算量を大幅に削減する分散協調型のMPCのアルゴリズムの開発と実証を目的としている. 平成29年度は,最終的に目標とした立体型の脚車輪型移動ロボットを対象とした協調分散モデル予測制御の適用と性能検証を行った.まずNASA/JPLのATHLETEを参考に,立体型の6脚の幾何学モデルを構築し,車輪位置を陽な状態変数とした表現に基づくMPCを構築した.その結果,路面の凹凸や車体の荷重バランスを考慮しながら路面に柔軟に適応した制御則を実現した.そしてロボットのモデルを脚ごとに独立させた分散型のモデルに対して,互いに協調するMPCとすることによって,MPCの計算量を大幅に削減できることを数値シミュレーションで示した.さらに路面の凹凸の変化が大きい地形に対して検証し,最適化計算の頑強性があることも確認した.また,昨年度に開発した軟弱地盤における車輪の沈降を考慮した動的シミュレーターを用いて,踏み固めを考慮したトラクション制御法を提案し,スリップ率を大幅に抑制できることを示した.
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