本年度は移動機構を有するリカンベントトライクを用いたリハビリシステムにおいて,片麻痺を有する被験者に対して提案した制御手法において,ペダリング力の左右差の評価をおこなった.前年度までで,電気刺激を用いた提案手法においてスムーズなペダリング運動が実現していることを確認していたが,実験システムにおいてはペダルに取り付けたエンコーダにより回転角度と回転速度のみを計測していたため,評価指標としてペダリングの回転角速度のみを用いていた.すなわち,片麻痺を有する非健常者に見られるペダリング力の左右差は間接的に評価していた.それに対し本年度は,リカンベントトライクのペダリング部に新たにパワーメーターを付加することで,ペダリング力の左右差を直接的に評価できるシステムを構築した.新たに構築したシステムを用いた健常者の実験において, 片麻痺患者を想定した片脚のみによる自発的なペダリング運動と,提案手法による筋刺激を用いたペダリング運動の比較実験をおこなったところ,ペダリング力の左右差において顕著な違いが見られた.具体的には5人の被験者で筋刺激する脚の左右入れ替えで10通りすべてにおいて,提案手法ではペダリング力の左右差を減少させており有用性を確認することができた.本年度に改善をおこなった新たな実験システムを用いた実際の片麻痺患者での実験は,期間中には調整がつかずに実現には至らなかったが,協力が得られている医療機関とは継続的に共同で研究を進めているため,調整がつき次第実験を実施する予定である.また,上記に関係する研究内容を国内外の学会で研究発表しており,論文誌にも投稿中である.
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