本年度は,前年度に始めた非線形最適制御のための研究を続けるとともに,最適制御の実応用のための研究を行った.成果は以下の通りである:1.非線形最適制御のための射撃法の開発;2.最適制御の実応用としての蓄電池の運用計画. 「1.非線形最適制御のための射撃法の開発」では,非線形最適制御のための有望な方法である安定多様体法について研究を継続し,Hamilton系の軌道計算の初期点を定めるための系統的な方法を開発した.すなわち,初期点に微小な摂動を加えた場合の軌道のずれを線形近似することで求め,これに基づいて望ましい軌道に近づけるためには初期点をどのように動かせばよいかを求める.Hamilton系の軌道計算が数値的に不安定であることに配慮して,QR分解を使うことも考えた. 「2.最適制御の実応用としての蓄電池の運用計画」では,最適制御の新しい応用として,住宅での電力料金を最小化するような蓄電池の運用計画について考察した.住宅における太陽光発電の場合,現在の日本の制度では,余剰の電力のみが買い取りの対象となる.このため運用計画を立てる際には,太陽光発電の発電量よりも,住宅でどの程度電力を使うかということの方が影響することがわかった. 本研究で始めた安定多様体法の改良の研究は,非線形制御の実用化のために大いに有用と考えられるが,サンプル値制御に拡張できるかどうかなど不明なことが多い.これに関しては後継の研究課題である科学研究費助成事業基盤研究(C)(一般)「非線形最適制御における構造保存数値計算の利用とサンプル値制御への拡張」で研究を続ける予定である.
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