2016年度に開発した「オブザーバ併合型出力フィードバックロバスト制御器とスケーリング行列の同時設計法」を用いた実験用航空機 MuPAL-αの横/方向運動制御に対する制御器設計を試みたものの,従来設計結果ほどの制御性能が得られなかったため,一旦設計を中止した. 一方,以前に開発した「不確かなスケジューリングパラメータを想定したゲインスケジュールド出力フィードバック制御器設計法」の定式化について,その保守性が確認されていたものの,その原因及び改善策が得られていなかった点について再考し,用いていた「不確かなスケジューリングパラメータを over-bounding する方法」が保守性を生じる原因であること,およびその改善策として消去補題(elimination lemma)と呼ばれる方法を用いることが有効であることを確認した.そこで,消去補題を用いた「不確かなスケジューリングパラメータを想定したゲインスケジュールド出力フィードバック制御器設計法」の定式化を行い,その有効性を国際会議にて報告した.さらに,MuPAL-αの横/方向運動に対する制御器設計を行い,設計および事後解析において従来手法による制御器に比べて制御性能が向上することを確認し,国際会議にて報告した.なお,飛行試験においても制御性能が向上することを確認したが,これは未発表である. また,消去補題を用いた over-bounding 法は,causality を課した連続時間ゲインスケジュールド出力フィードバック制御器設計問題に対しても有効であることを確認し,国際会議にて報告した.さらに,そのほかの適用先として,一般的な双線系行列不等式(Bilinear Matrix Inequality; BMI)の繰り返し計算における over-bounding 法としても有効であることを九州工業大の瀬部先生と共同で確認している.
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