研究課題/領域番号 |
15K06160
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
上原子 晶久 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (70333713)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鉄筋腐食 / 小型はり / 中型はり / 繊維補強モルタル / 再現性 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは,塩害劣化により損傷した橋梁の残存耐力を予測する研究を行ってきた.そこで課題となったのは,解析において実際の力学的な挙動を再現しているかを検証できないことであった.そのことを解決するため,小型鉄筋コンクリートはりを活用した研究を行うことを着想した.昨年度の研究では,小型はりにおける最適な配合や使用材料を見出すことができた.本年度は,鉄筋腐食が生じた小型はりが腐食後の中型はりが示す力学挙動を再現できるかについて検討を行った. 本研究では2種類のはりを作製した.一方は,通常の鉄筋コンクリート中型はりである.もう一方は,中型はりの寸法を1/2にした小型はりである.小型はりでは,スターラップを挿入するのは困難なので,既往の研究を参照して繊維補強モルタルを利用した.本実験のパラメータは,小型はりにおける繊維混入率(1.0%・1.5%)と主筋の腐食量(0%・15%・30%)である.それぞれを組み合わせて8体の試験体を作製した.一方,中型はりは2体を作製した.鉄筋腐食を再現するため,電食試験により中型・小型はりの主鉄筋に腐食を与えた.電食試験終了後, 2点に集中荷重を加え,単純支持で曲げ載荷試験を行った.載荷試験終了後,鉄筋腐食の生じたはりについては,鉄筋を削りだした.その後,重量を計測して実測の腐食量を計測した. 曲げ載荷試験の結果,腐食の生じていない基準試験体において,小型はりの繊維混入率が1.0%であれば,中型はりの力学挙動を概ね再現することに成功した.しかし,腐食が生じた場合には,特に繊維混入率が1.0%の場合において中型はりと小型はりとの対応が悪い.これは,小型はりにおける実測腐食量が目標腐食量を大きく下回っていることが原因である.繊維混入率が1.5%の場合では,腐食量の実測値が目標値に近いため,耐荷性状が中型はりのそれに近づく傾向にあった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,3ヵ年の計画である.昨年度は,小型縮小模型としての鉄筋コンクリートはりが実現可能であるかについて検討した.その結果,従来から広く利用されている通常のスケールモデルの鉄筋コンクリートはりと同等の挙動を示す小型縮小はりを見出すことができた.本年度は,その結果基づいて小型縮小はりを作製して,鉄筋腐食が生じた場合の力学挙動について検討を行った.昨年度と同様,本年度の研究では,通常の鉄筋コンクリートはりと同等の腐食・力学性状を示す小型縮小はりを得ることができた. 以上より,昨年度と本年度の研究成果は,ほぼ計画に即して推移していると判断される.そのため,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討を踏まえて,橋梁の模擬上部工を作製して載荷試験を行う。模擬上部工の元になるスケールは,実際に劣化した橋の上部工に基づいて決定する。模擬上部工の作製にあたってはこれまでの検討と同様に,模擬上部工の主鉄筋比を元のスケールの橋と同じにする。各々の単体けたに電食試験を実施して,実際の橋と同等の鋼材腐食を与える。それと合わせて,劣化を偏在させた模擬上部工を作製する。以上の試験体に対して載荷試験を行い,荷重,各けたの変位を計測する。この結果を3次元非線形有限要素解析の結果と比較して,力学的な挙動に矛盾のないことを確認する。なお,有限要素解析において,従来から適用されている応力-ひずみ関係や主筋とコンクリートの付着-すべり関係がそのまま適用できない可能性がある。その場合には,要素試験を行ってそれらの関係を定式化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は42円と極めて少額であり,正当に研究に関する物品が購入できなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験における物品購入に充当する.
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