本研究では,塩害で劣化した橋の力学性能や冗長性(リダンダンシー)を主に実験的検討により明らかにした。具体的には,これまでの鉄筋コンクリート構造に関する実験で用いられている数メートルオーダーの試験体よりもさらに小さな試験体を作製して検討を行った。得られた成果を以下にまとめる。 (1)複雑な配筋の大体として繊維補強モルタルを用いた小型の鉄筋コンクリートはり(幅55mm・高さ95mm・長さ985mm)を作製して載荷試験を行った。その結果,一般的なスケールを有する鉄筋コンクリートはりと力学的な矛盾がないことを確認した。 (2)以上の小型はりを電食試験に供して,塩害劣化を模擬した試験体を作製した。それについて載荷試験などを実施した。その結果,一般的な鉄筋腐食の生じた鉄筋コンクリートはりと同様の力学挙動を示すことを確認した。 (3)(2)のはりを複数連結して,通常の橋梁上部工を模擬した載荷試験を行った。その結果,塩害劣化したはりが多数連結されていても,力学挙動は大きく低下しない結果を得た。 一方で,本研究では小型はりにおける主筋の質量減少率が10%程度の範囲の実験を行った。その範囲では,(3)のような結論が成立する。一方で,主筋の質量減少率が20%以上となるような劣化が進展した範囲での検討を行うことができなかった。このことに関しては,今後の課題であり,鋭意検討を進めていく予定である,さらに,小型模型によるプレストレストコンクリート構造に関する検討についても並行して実験を進めたいと考えている。
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