土木構造物の新たな維持管理の手法として、構造物にセンサを設置し健全度評価を行う、構造ヘルスモニタリングへの関心が高まっている。振動波形を利用した構造ヘルスモニタリングは構造物の振動特性の変化から損傷の程度や位置を検出する。しかし、構造物の動的応答は健全であっても環境温度などの影響で変動する。そこで、本研究では橋梁全体系の振動モードを対象として、申請者がこれまで開発したスマートセンサーなどを用いて高密度振動計測を行った。一方、構造物の温度分布については、赤外線サーモグラフィカメラの適用が考えられるため、これを用いた実橋梁での温度分布の測定を行った。 本研究では、長さ3mのプレストレストコンクリート供試体や、コンクリート鉄道橋、鋼道路橋で振動計測を行い、季節や部材温度により構造物の振動特性が変化することを確認した。特に、プレストレストコンクリート供試体では、温度変化に加えて、ひび割れを発生の有無により振動特性の変化を検討した。この結果、部材の有効断面積が変化するほどの大きな損傷が生じた場合には温度変化以上の振動特性の変化が発生するが、それよりも小さな損傷では温度変化や支点条件の微妙な変化の影響が大きいことが明らかになった。また、コンクリート鉄道橋では、表面からの温度分布よりも、バラストの凍結状態の方が影響が大きいことを明らかにした。なお、サーモグラフィカメラの温度計測は温度分布を面的に測定可能であるが、実環境では測定値の変動が大きいことも分かった。鋼道路橋では、同じ橋梁でも日射により部材温度がかなり異なるためこれを考慮した解析が必要であることを確認した。
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