研究課題/領域番号 |
15K06180
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
河村 圭 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (70397991)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 維持管理 / ひび割れ抽出 / 画像処理 / 社会基盤 / コンクリート施設 / 知的情報処理 / 対話型遺伝的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
我が国の社会基盤施設の点検は、センサやロボット技術の発展に後押しされ、点検現場にて質の高いデジタルデータが生成され、事務所において大量のデータを情報へ変換する時代へと移行している。しかし、デジタルビデオ等により作成された撮影画像展開図から変状図へ変換する作業の自動化は進んでおらず、依然としてCAD等をベースとした長時間のトレース作業が実施されており、作成経費も高額である。そこで、本研究は、コンクリート施設の点検・診断プロセスを革新するための要素技術となる、新たな変状図作成支援システムの創成を目指す。具体的には、人間と計算機の協働を可能とした知的情報処理により、効率的かつ高精度に変状展開図を半自動的に作成する手法を確立し、変状図作成支援システムのプロトタイプを開発する。なお、本研究の主な対象施設および変状は、トンネルまたひび割れとする。この実現のため、次の主要技術の研究・開発・検証を行う。【技術1】直観による画像処理パラメータ調整、【技術2】指を利用したひび割れ抽出、【技術3】撮影画像展開図および変状図Viewerの開発 平成27年度は、分割画像領域から効率的に、ひび割れを高精度で抽出する次の研究を実施した。 技術1:画像処理パラメータの調整には、タッチパネルおよび対話型遺伝的アルゴリズムを利用し、ユーザはシステムが提示したサンプル画像を主観的に評価することで、撮影画像展開図の画質に適した画像処理パラメータへ調整できる機能を開発した。これにより、ユーザは画像処理に関する知識がなくともパラメータを直観的に調整できる。 技術2:人間の、より自然な作業動作を可能とするタッチパネルを利用し、タッチパネルに表示された撮影画像上のひび割れを指で抽出領域をおおまかになぞることにより、ひび割れを抽出する機能を開発した。なお、ひび割れ抽出の画像処理は、技術1により調整されたパラメータにより実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の研究開始初年度である平成27年度は、当初に予定した研究実施計画の内容以上に研究を進展させた。本研究にて開発する変状図作成支援システムの主要技術となる【技術1】直観による画像処理パラメータ調整、および【技術2】指を利用したひび割れ抽出の基盤技術を確立するとともに、プロトタイプソフトを開発し、実画像また複数のユーザに対する本技術およびソフトの有効性に関する検証を実施した。このように、変状図作成支援システムの基盤技術の開発のみならず、これらを実装したプロトタイプソフトの開発および検証まで研究を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、主に変状図全体を効率的に作成する手法の研究を行う。 技術1および技術2の拡張:平成27年度に構築した技術1および技術2の基盤技術をもとに、さらに、機能の拡張および洗練を行う。平成27年度に開発した技術2によるひび割れ抽出作業は、トンネル全体の撮影画像展開図を小領域に分割して実施する必要がある。この分割により、抽出対象であるひび割れが分割される可能性があり、本来は同一箇所で発生しているひび割れであっても、ユーザは分割画像領域ごとに抽出作業を行うことになり、作業時間増加の原因となる。この問題を解消する技術開発を行う。ひび割れの抽出精度に関しては、平成27年度に開発した技術1および技術2の基盤技術がコアとなるが、全体作業の高速化には、平成28年度に実施予定の本拡張技術と次の技術3が大きく影響する。 技術3:コンクリート面は広範囲となることから、全体また注目領域のみを表示するViewerの開発が必須である。本Viewerの開発では撮影画像展開図を1つの電子地図とみたて、スムーズな画像確認および情報の書き込みを可能とする。
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