本研究の目的は、人間と計算機の協働を可能とした知的情報処理により、効率的かつ高精度に変状展開図を半自動的に作成する手法を確立し、コンクリート施設のための変状図作成支援システムを開発することである。なお、本研究で対象とする変状は、ひび割れである。この実現のため、次の主要技術の研究・開発・検証を行った。【技術1】直観による画像処理パラメータ調整、【技術2】指を利用したひび割れ抽出、【技術3】撮影画像展開図および変状図Viewerの開発 平成29年度は、深層学習を利用したひび割れ領域の自動識別法を研究した。さらに、撮影画像展開図全体を表示できる機能を開発した。以下には、補助事業期間全体を通して得られた成果をまとめる。 技術1:ひび割れ抽出のための画像処理パラメータ調整に、タッチパネルおよび対話型遺伝的アルゴリズムを利用し、システムが提示したサンプル画像を、ユーザは主観的に評価することで、撮影画像展開図の画質に適した、画像処理パラメータへ調整できる機能を開発した。これにより、ユーザは、画像処理の知識がなくともパラメータを直観的に調整できる。 技術2:タッチパネルに表示された撮影画像上のひび割れを、ユーザが指で抽出領域をおおまかになぞることにより、ひび割れを抽出する機能を開発した。さらに、技術1と2を統合した、ひび割れ抽出画像処理ソフトを開発した。これにより、ひび割れ抽出のための画像処理パラメータ調整から抽出までの一連の作業がソフト上で連続操作でき、分割画像領域における、ひび割れ抽出作業の効率化を実現できた。また、深層学習を利用した、ひび割れ領域の自動識別を可能とすることで抽出作業の効率化を実現した。 技術3:一般的なブラウザ上で、撮影画像展開図全体を表示できる機能を開発した。将来、技術2と連携させることにより、撮影画像展開図全体から円滑に、ひび割れ抽出作業ができるソフト開発が可能となった。
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