耐候性鋼橋梁を適切に維持管理し、長寿命化をはかるためには、鋼材表面に生成するさびの評価手法、爾後のさび進展予測手法および効果的な補修技術の確立が必要不可決である。そのため本研究では、耐候性鋼材表面のさび生成・進展モデルの構築を図るとともに、耐候性鋼材さび層内部の塩化物を除去する方法を検討する。さらに、耐候性鋼材の補修フローの提案を図る。 鋼材表面の塩化ナトリウムの潮解性による吸水量は塩分量および湿度に依存することが明らかとなり、吸収水分の乾燥時間は塩分量が同じ場合,水分量に依存しないことが明らかとなった。これらは数学モデルとして提示した。一方、既にさびが生成した鋼材上での吸水挙動は、初期状態の鋼材とは異なり、さび生成に至る履歴の影響を受けることが実験により明らかとなった。付着物の無い状態でのさびの進展は面的に限定的な範囲にとどまる。しかし、水分がさびにより浸透する場合のさび進展は複雑な挙動となり、新たなさびと既に生成しているさびとの分離が困難である。 炭酸ナトリウムにより耐候性鋼材上に生成したさび中に存在する塩化物の除去を試みた。実験では塩水噴霧により人為的に作成したさび供試体に対して動力工具でさび除去を施したのち、炭酸ナトリウムを2回塗布し、さらにブラスト処理により下地調整をおこなった。この供試体にRC-1塗装系と同様の塗装を施したのち、再暴露した。その結果、顕著な再腐食は認められず、内在塩分はある程度除去できたと考えられる。 既往の知見に本研究の成果を加味し、補修フローの骨格について検討した。
|