研究課題/領域番号 |
15K06183
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
玉井 宏樹 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20509632)
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研究分担者 |
櫨原 弘貴 福岡大学, 工学部, 助教 (70580182)
宗本 理 愛知工業大学, 工学部, 講師 (70737709)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 鉄筋腐食 / 鉄筋コンクリート / 衝撃荷重 / FEM解析 / 残存性能 |
研究実績の概要 |
橋梁などの構造物に比べて特に知見が不足している経年劣化により局所損傷を有するRC製防護構造物を対象に,自然災害で起こりうる衝撃的な外力に対する安全性や機能性の確保を目的とし,実験・解析の両面からその残存耐荷性能を力学的に明らかにし,さらに,維持管理技術に資する防護構造物の健全度評価法を確立することを最終的に目指している。その最終目標を達成するために,RC部材に着目した実験及び解析を実施した。 具体的には,今年度は,まず,低速度衝突を受けるRC梁および版の繰り返し衝撃実験を実施し,鉄筋の腐食程度を表す腐食率と破壊までの繰り返し入力エネルギーで評価される残存耐衝撃性能の関係を明らかにした。なお,対象とした供試体は全て設計時に曲げ破壊型で破壊するものとした。その結果,腐食率12%程度において,静的の残存耐荷力は初期の80%ぐらいであるのに対し,衝撃荷重が作用する場合は20%にまで低下することなど,衝突などの衝撃荷重が作用した場合の残存性能は著しく低下することを明らかにした。また,それは,腐食により生じたひび割れと載荷によるひび割れが結合することで,かぶりコンクリートの剥落を助長することや,衝撃荷重による振動が付着性能の低下を早めることなどに起因していると考えられるが詳細については今後も検討が必要である。 次に,FEM解析による再現のため,腐食の影響を,鉄筋の断面積減少,付着性能の低下,周辺コンクリートのひび割れの3項目のモデル化を提案し,それにより比較的精度良く実験を再現できることを確認した。ただし,腐食に伴い生じるひび割れによる剛性低下や動的付着性能については今後も検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析に関しては,当初の予定通り,FEM解析による再現のため,腐食の影響を,鉄筋の断面積減少,付着性能の低下,周辺コンクリートのひび割れの3項目のモデル化を提案し,その精度検証まで完了しているため,おおむね順調であるといえる。 実験に関しては,現在,低速度衝突実験のみにとどまっており,当初計画で予定していた中速度衝突実験が完了していないが,年度末に試験装置・治具の設置を完了し,現在実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画通り,下記を実施予定である。 1)代表者所属機関が所有しているエア加速式水平衝撃試験装置を用いて,質量3kg,衝突速度5~25m/sの低速~中高速衝撃実験を実施し,損傷レベルに応じて,RC版部材の耐衝撃性能(時刻歴変形応答や破壊状況)が如何に変化するかを詳細に調べる。なお,質量3kg,衝突速度5~25m/s という衝突条件は自然災害で発生するレベルの範囲内であるが,過去にあまり実験結果が蓄積されていないため,本実験結果は非常に有用なデータになると考えている。なお,実験ケース数が膨大になる場合は,田口メソッドなどの実験計画法により実験ケースを厳選する。また,衝撃実験を実施する前に,損傷試験体に対して,打音法,赤外線法,自然電位法・分極抵抗法による非破壊検査をそれぞれ実施し,それらの出力値と損傷程度の関係を整理する。さらに,衝撃実験結果とこれらの関係を比較することで,“実際の劣化状況”と“非破壊検査出力値”と“RC版部材の残存耐荷(耐衝撃)性能”の相関性を明らかにする。 2)腐食に伴い生じるひび割れによる剛性低下や動的付着性能について考慮したFEM解析モデルを構築し,実験の再現解析を実施する。
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