車両衝突によって損傷した鋼橋モデルを作成した.平成28年度の検討対象とは異なった橋で,衝突箇所の残留水平変位は最大で69mmである.これはスパンの1/544に過ぎず,比較的小さい.しかしながら,下フランジが局部的に曲げ上げられ,最大で122mmの残留鉛直変位が生じていた.この局所変形は,鉄道橋で確認されている最大値より大きい.また,垂直補剛材の座屈も見られた. まず,衝突荷重の同定を試みた.顕著な変形箇所が複数あること,下フランジが突き上げられていること,下フランジに残るこすれによる損傷,当該跨道橋と橋下道路の位置関係などから,複数の荷重が下フランジにある角度を持って作用したと推察された.その上で,実橋で計測された残留変形が得られる荷重を推定した.これには,3次元複合非線形有限要素解析を用いた.こうして求めた衝突荷重により,主桁の残留変形,垂直補剛材の座屈を概ね再現できた. 次いで,この荷重を作用させて,衝突による損傷状態を再現した主桁の耐荷力を3次元複合非線形有限要素解析で算定した.解析に際しては,損傷域外側の2点に同じ大きさの集中荷重を作用させた.解析の結果,衝突損傷により,塑性変形が小さな荷重で始まるものの,耐荷力低下は7.6%にとどまることが判明した.衝突による局所変形はかなり大きいが,設計時に1.7の安全率が取られていることを考えれば,直ちに交通規制を行う必要はないと判断される.
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