研究課題/領域番号 |
15K06186
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
伊藤 幸広 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90223198)
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研究分担者 |
出水 享 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00533308)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コンクリート / 応力解放法 / コア |
研究実績の概要 |
PC構造物の現有応力を測定するスリット応力解放法は,測定精度が高いものの応力が卓越する方向が存在するPC部材には有効であるが,複雑に応力が作用している一般の部材では適用が難しい。また,ラインセンサタイプ全視野ひずみ計測装置によりひずみを測定する際,測定面に凹凸があると正確な測定値が得られない。本年度は,まず簡易にコンクリート表面を平滑に研磨できる装置を開発するとともに,薄厚コア切削装置を開発しコアをコンクリート部材から分離することにより完全応力解放状態を作ることを目的とした。 表面研磨装置としては,コンクリート表面に対し平行に配置したレール上にダイヤモンドビットを取り付けた研磨機器を載せ,さらに研磨機器とレールが直交方向に平行移動できるようにしたものである。外形寸法(W×H×L)は,818mm×80mm×405mmであり,総重量は6.4㎏である。研磨可能範囲は,696mm×278mmであり,全視野ひずみ計測装置の撮影範囲210×375mmを研磨できる。 試作した薄厚コア切削装置は,コアドリルによる切削溝に作製した小型のダイヤモンドワイヤーソーを入れ,コアドリルを用いて回転させ,コア底部を切断するものである。コア底部を切断することにより完全な応力解放状態を作り,全視野ひずみ計測装置を用いて解放ひずみを測定し現有応力を求める。 コンクリート表面研磨装置と手研磨でコンクリート面を研磨した際の表面の高さ分布を比較した結果,研磨装置の方が平滑に研磨でき、その高低差は最大で0.5mmであった。また実構造物において,全視野ひずみ計測装置を用いてスリット応力解放法を行った際の対称点間距離変化率は,研磨装置のラインはFEM解析値と相似の形状となるが、手研磨では凹凸によりピントが合わない範囲が多くデータに大きなバラつきが生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画には入っていなかったが,各種検討を進める内,提案する応力解放法を合理的かつ高精度な方法として実現するためには,表面研磨装置が必要であることが分かった。そこで表面研磨装置の開発から始め,短時間で平滑な表面を形成できる装置を開発した。また,薄厚コア切削装置に用いる細径のダイヤモンドワイヤーソーは,金型を用いずダイヤモンドを金属パイプ表面に電着する方法でビーズを製作することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の課題として明らかとなった事項は,薄厚コア切削装置を低トルクでコア底部を切断する機構の開発およびダイヤモンドワイヤーソーの耐久性向上であり,次年度の研究で継続して行う。また,当初計画の以下の事項について次年度研究を行う。 ①ラインセンサタイプ全視野ひずみ計測装置の精度向上の検討:更なるひずみ計測精度の向上を目的とした装置の改良を行う。副走査の駆動系であるボールネジ,リニアエンコーダーなどの種類,タイプや位置の見直しを行い,副走査の送り精度を上げ,ひずみ計測精度の向上を図る。 ②薄厚コア切断装置を用いた応力解放法の確立:3000kNの耐圧試験機により試験体に一軸圧縮応力を作用させ,薄厚コア切削による応力解放試験を行い,応力測定精度の検証を行う。この時,載荷軸方向,ポアソン方向,斜め45°方向のコア内の解放ひずみを改良した装置により測定する。また,コア内のひずみ分布を測定し,無載荷時のコアと同一位置のひずみ分布と比較して応力の解放状態を評価する。 ③薄厚コアを用いた静弾性係数試験方法の検討:測定したひずみ値から応力を求める際に静弾性係数が必要となるが,採取した薄厚コアを用いた静弾性係数の測定の可能性について検討を行う。割裂引張試験のようにコアの直径方向に圧縮載荷し,表面に発生する引張ひずみより静弾性係数を求めるものとする。
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