研究課題/領域番号 |
15K06198
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
片桐 信 摂南大学, 理工学部, 教授 (10554412)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光ファイバセンサ / PE管 / 埋設管路 / 地盤変状 / 逆解析 / 実験的研究 |
研究実績の概要 |
2015年度は、長さ4mの土槽(埋設段差変位土槽)を製作して、本土槽にPE管光ファイバセンサを埋設して、中央土槽に油圧ジャッキで変位を与える実験を行った。実験の結果、①光ファイバセンサからの検出ひずみは、別途貼付したひずみゲージの検出ひずみと精度よく一致していた。また、②PE管光ファイバセンサの曲げひずみを中心差分を用いた方法で積分して得られる管軸直角方向変位の計算値は、実験での実測値と精度よく一致した。さらに、③PE管の管軸直角方向変位分布から、入力である段差状地盤変位の逆推定を行ったところ、逆推定値は概ね入力変位分布と一致していることが明らかとなった。この成果は、既に論文として公表している。
2016年度は、前年度に作成した長さ4mの土槽(埋設段差変位土槽)を用いて、PE管光ファイバセンサを併設する既設管路を模擬した模型管路の応答計測実験を行った。実験は、模型管路(硬質塩化ビニル製、φ50㎜)を同土槽内に真砂土を用いて埋設し、中央土槽に油圧ジャッキで変位を与えた。変位は2㎜毎に静的に与え、その後の模型管路の管軸方向ひずみ分布と、管軸直角方向の変位分布を計測した。前年度、PE管光ファイバセンサを用いて同様の実験を行っている。この際に得られたデータから、入力である土槽変位分布の逆推定を試み、良好な精度での逆推定がなされている事を確認している。本年度は、前年度に逆推定した土槽変位分布を既設管モデルへの入力と考えた数値解析を行い、数値解析結果(管軸直角方向変位分布)と実験での計測値を比較した。その結果、両者は非常に良好な精度で一致しており、本研究で提案する一連の方法が実験でも精度よく成立することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の実験や数値解析で、本研究が目指す一連の方法論が、実験的にも妥当な結果をもたらすことが確認された。したがって、基本的に本研究で提案するPE管光ファイバセンサを用いた既設管路の地盤変状に対する応答推定は、方法として十分な精度で成立することが確認された。 しかしながら、光ファイバセンサの技術開発が日進月歩であり、本研究の過程でも新しい技術が開発されている。そこで、最も新しい光ファイバセンシングの技術が、本研究の提案法に提要出来るのかを実験的に確認する必要が生じた。また、当初計画で検討していた、PE管光ファイバセンサの長尺化のための継手開発を2017年度は進める必要がある。これらを解決することで、実用的な方法論を社会に提案することが可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、まず新しい光ファイバセンサの方式である新型BOTDRを用いた場合のPE管光ファイバセンサのひずみ検出精度について、初年度に製作した長さ4mの土槽(埋設段差変位土槽)を用いた実験で確認する。 さらに、前述のように同センサの長尺化のための継手構造を考案して、その初期タイプを試作するとともに、継手の有無によるPE管挙動ならびにPE管ひずみ検出精度への影響を実験的に評価する。 これら2点をクリアすることにより、実現場での試用に結びつくような技術・製品の開発を完了することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、新規に購入する備品および高額な消耗品が無かったため、140万円の計画のところを全く使用しなかった。これは、当初計画で実験に用いようと考えていた学外施設が、使用出来なかったため、平成27年度に製作した実験装置を用いて、供試体のサイズを実規模のものから縮小して対応したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に使用しなかった直接経費と平成29年度分の直接経費については、これらを合わせて下記の目的に使用する計画である。①消耗品:PE-100というポリエチレン材料の被覆を有する光ファイバ線の製作費用(概算100万円)。②PE管光ファイバセンサの長尺化のための継手試作品の製作費用。③実験に用いる消耗品(治具)の製作費用。
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