本研究の目的は、流れ場の中に置かれた構造物が流体力を受けて変形し、またその変形によって流れ場が変化するような流体構造連成問題を精度よく解析することを目的として、流れ場と構造物の境界・領域形状表現および流速、圧力、変位等の目的変数の近似に高性能基底関数を用いた流体構造連成解析手法を構築する。高性能基底関数とは、Hermite補間に基づく基底関数やCADの形状表現に用いられるBスプラインやNURBSのような導関数に対して連続性を可能にするものであり、一般的な有限要素法で用いられるLagrange補間に基づく基底関数と比べて関数近似能力および形状表現能力に優れている。このような高性能基底関数の適用によって、高精度かつCADとの親和性の高い流体構造連成解析手法の構築が期待できる。 2017年度における主な研究成果は、乱流場に対して本解析手法を適用することを目的として、有限要素法の分野で近年用いられるLESによる乱流解析のためのVariational Multiscale(VMS)法、またその発展であるResidual-based VMS(RBVMS)法の検討を行った。また、乱流中で構造物まわりの流れの解析を行うために、流入変動風の作成についての検討も行った。乱流解析においては非常に多くの計算量を必要とすることから、高性能基底関数の適用と流体構造連成解析を行うには至らなかったが、ベンチマーク問題としてよく用いられる乱流場に置かれた角柱まわりの流れの解析によって精度検証を行い、良好な精度を得ることができた。また、2016年度から導入してきたNitcheの方法に基づく弱拘束型境界条件を、スリップ境界条件の問題にも適用できることを確認した。
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