研究課題/領域番号 |
15K06207
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
荻野 俊寛 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (80312693)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 泥炭 / 非排水強度 / 変形係数 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに盛土を併用した真空圧密工法をシミュレートした三軸試験から, 負圧および軸応力載荷を複合的に受ける泥炭の側方ひずみが軸応力の載荷条件によって圧縮側から引張側まで幅広い範囲で制御可能であることを示し,平成27年度には代表的な載荷条件2ケースについて,負圧および軸応力載荷過程において, 泥炭の変形特性や強度特性がどのように変化(増加)していくかを確かめる一連の実験を計画・実施した。平成28年度は引き続き前年度の継続実験を実施・完了した。また,新たに真空圧密を用いない通常の異方圧密非排水三軸試験を実施し,強度変化を比較した。さらに,一連の実験結果の再現性を確かめるため,いくつかの代表的な構成モデルを用いて強度・変形特性の比較に着手した。平成27,28年の研究から, 以下のことが明らかとなった。 1 負圧および軸応力載荷過程の泥炭の非排水せん断強度の変化は軸応力載荷速度によって大きく異なる。 すなわち,軸応力載荷速度が小さい場合,非排水せん断強度は圧密度とともに単調に増加するが, 軸応力載荷速度が大きいきい場合,圧密度が増加しているにもかかわらず,いったん大きく減少する。また,変形特性についてもほぼ同様の傾向を示す。 2 負圧を受けた泥炭は等方的な応力変化にも関わらず,その変形は軸ひずみに比べ側方ひずみの発生量はかなり小さく,顕著な異方性を示す。これは泥炭を形成する植物遺骸の配向に起因する構造異方性によると考えられる。このような変形の異方性は既往の代表的な構成モデルでは考慮することが出来ず,特に,降伏曲面を楕円形で規定している修正カムクレイモデルでは側方ひずみをかなり過大評価することが明らかになった。 H29年度は強度特性について,実験結果と構成モデルとの比較を行い,カムクレイ以外の構成モデルについても検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に記載した下記の研究目的のうち,1,2について,ほぼ完了し,5について着手・実施中である。 1. 盛土併用真空圧密工法をシミュレートした室内三軸試験を実施し,盛土荷重と真空圧を複合的に受ける泥炭の強度の発現過程を明らかにする。 2. 上記試験中,連続的に S 波速度を測定することにより,強度に加え,剛性の発現過程も明らかにする。 3. 真空圧および盛土荷重を複合的に受ける土の強度と S 波速度の関係を明らかにし, S 波速度から強度変化を推定可能であることを示す。 4. 実施工の現場で得られた強度-S波速度関係から原位置での整合性を検証する 5. 各種構成モデルの強度と比較し,モデルの再現性を検証する。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度の研究の進捗によって,泥炭の構造異方性が当初想定していた以上に変形特性に大きな影響をおよぼすことが明らかになった。泥炭の組成を考えれば,構造異方性が強度特性にも強い影響をおよぼすことは容易に想像される。このことから,当初目的としていた上記,研究目的3,4を保留し,変形・強度特性におよぼす構造異方性の影響を明らかにすることを優先する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時に計画していた数値解析用プリ・ポストプロセッサおよび数値解析用サーバーPCの購入を変更し,安価なものに変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は当初研究計画をやや変更して泥炭の構造異方性の影響を検証する実験を予定している。次年度使用額はそのために必要な実験装置改良のための費用に充てる予定である。
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