研究課題/領域番号 |
15K06211
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
河井 克之 近畿大学, 理工学部, 准教授 (30304132)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 土壌圏現象 / 自然災害 |
研究実績の概要 |
近年多発しているゲリラ豪雨は,極めて局所化しておりその発生予測が困難であるばかりか,長期間安定していた既存土構造物がそれまで経験したことのない降雨にさらされるため,これまでの降雨に関する避難警報発令や道路などの交通規制基準の見直しを迫られている.同時に人的被害を抑制するためには,住民の災害に対する意識向上も求められている.そのため,土砂災害発生に関する前兆現象を早期に把握することが減災に有効であるといえる.しかしながら,経験的に知られている土砂災害の前兆現象の中でも,発災前の異臭や異音については土質力学の枠組みの中で十分には説明できない.そこで,本研究ではこれらの現象が地盤構造物内の空気圧挙動に関係があるものとして,力学モデルの構築,模型実験からそのメカニズムを解明する. 1年目は,力学モデルの構築を行うとともに,模型実験用の実物大盛土構築を行った.2年目として当該年度では,模型盛土での降雨浸透挙動を把握のために,土壌水分計,テンシオメーター,空気圧計を設置し,長期にわたる定点観測を行った.その結果,盛土における浸透雨水は,降雨によって飽和度の高まった法面近傍を法尻に向かって流下する傾向があるため,盛土深部へ到達するためには相当量の総雨量を要することが分かった.また,降雨停止後,法肩付近は法尻付近に比べて早期に乾燥するため,サクションの回復も早いことが明らかとなった.空気圧については,降雨量が少ない時にはほとんど変化することはないが,降雨強度が大きな場合,盛土内で空気が封入されることで空気圧が高まる結果となった.降雨後は,常時よりも空気圧が下がる傾向が法尻付近で見られた.この挙動については,現状では説明が困難であるものの,再現性があり今後詳細に検討していきたい.同時に行った降雨浸透解析では,含水率分布,水圧分布,空気圧分布についてある程度同じ傾向を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実盛土における計測について,初年度に計測機設置まで行えていたため,十分な計測データを得ることができた.また同時に降雨浸透解析も行い,理論値と計測値の比較を行えた.高容量テンシオメーターを可能にするための実験については,実験準備を整えるにとどまったため,本評価となった.
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今後の研究の推進方策 |
力学モデル構築,実物大盛土での降雨浸透挙動把握,浸透解析と順調に研究を遂行できている.3年目となる今年度は,盛土のサクション計測で問題となる,テンシオメーターの改良に主眼を置く.テンシオメーターは先端のセラミックポーラスカップを飽和させることで地盤の間隙水をセラミックを介して受圧部まで連続させ,空気圧とは独立に水圧を計測するものである.そのため,セラミック部の飽和が重要であるが,長期の計測や高サクション地盤について,セラミックが不飽和化することが問題である.ここでは,セラミックの飽和状態をCTスキャナーで可視化し,不飽和化のメカニズムを明らかにするとともに,効率的な飽和化手順を模索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費が当初計画よりも安価で済んだため.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の,消耗品費として計上.
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