研究課題/領域番号 |
15K06212
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
日野 剛徳 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 教授 (20295033)
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研究分担者 |
柴 錦春 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20284614)
根上 武仁 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30325592)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 粘性土 / 酸化還元特性 / 物理化学的性質 / 透水係数 / 拡散係数 / 地盤環境 / 地盤改良 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、現世粘性土の酸化還元サイクル試験の実施、各物理化学的検討項目の経時変化に関する検討、粘性土の嫌気性復元力の工学的パラメーター化に関する検討を中心に本研究を進めた。 研究フィールドの対象としている有明海西岸低平地における表層軟弱粘性土の酸化還元特性に関する原位置データの収集を行った。有明海沿岸低平地は東岸の福岡県筑後地域から西岸の長崎県諫早地域にかけて砂質軟弱、砂泥質軟弱および泥質軟弱のように様相を違える。当地の東岸、ならびに北岸の佐賀県佐賀地域においては表層軟弱粘性土における酸化還元特性の原位置データが得られていたが、西岸においては未知であった。各地域における地層の様相に照らした酸化還元特性の原位置データが出そろったことにより、今後の検討結果に対し物理化学的性質の側面から正規化に取り組める環境を整えることができた。 生物起源パイライトの生産地帯であり、上記の低平地に注ぐ六角川の流域において、現世の粘性土試料を採取した。この試料に対し、酸化還元電位、pH、塩濃度の測定を行い、液性限界、塑性限界、粒度組成および強熱減量を求めた。また、これらの各計測値を求めた後、酸化の促進効果を意図した過酸化水素水6%を用いて強制的に試料を酸化させた後、同様の試験を行った。得られた結果から、酸化還元電位は大きくなり、pHは低下したことが確認できた。液性性限界、塑性限界ともに低下する傾向が見られた。生物起源パイライトおよび含有有機物の酸化による影響と考えられえる。次年度は、SEMによる生物起源パイライトの確認、ならびに地盤工学的パラメーターの変化についてさらに検討を深める。 粘性土に酸化還元サイクル現象をもたらすと考えられる地下水流動の視点に基づく2次的な地盤環境の変化に関する解析的研究を進め、研究分担者・代表者の共著による1編の論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粘性土中の好気性・嫌気性バクテリアをうまく利用して酸化させることが本研究の構想の一つであるが、研究着手の折の研究代表者・分担者間の議論の結果、実験計画の安全な担保を得ることを目的として、急きょ粘性土の酸化を加速させるための過酸化水素水を用いた室内実験に関する情報収集を行い、経験者からの研究指導を得ることとした。過酸化水素水の分解速度は速いことが懸念されたが、結果として、1ヶ月~6ヶ月程度のスパンであれば、問題なく酸化材として機能していることがわかってきた。この実験を取り入れたことにより、力学試験が年度末に後ろ倒しになってきているため、今年度の成果としての公表が間にあっていない。しかしながら、次年度の研究計画において十分に挽回の余地があり、全体の計画に支障はなく概ね順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者・日野および研究分担者・根上は、陸域の完新世の地層における粘性土を固定ピストン式シンウォールサンプラーにより採取し、平成27年度と同様の実験に供する。 研究分担者・柴は、2次元物質収支(地下水流動)解析プログラムを用い、粘性土における固相・液相間の物質収支、粘性土・溶媒間の物質収支および地層中の物質収支に関する解析を行う。さらに、柴は同プログラムを用い、粘性土の嫌気性復元力のパラメーター化に関する検討を行う。 日野、柴および根上は、それぞれの成果を持ち寄り、粘性土の嫌気性復元力の工学的パラメーター化に関する平成28年度分の総合的な検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の安全な担保を得ることを目的として、急きょ粘性土の酸化を加速させるための過酸化水素水を用いた室内実験を取り入れたために、力学試験が年度末に後ろ倒しになっている。このことが次年度使用額を生じせしめた一因になっている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に計画している研究の予定、さらに上記の酸化加速度試験のために使用する。
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