研究課題/領域番号 |
15K06219
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
加納 誠二 呉工業高等専門学校, 環境都市工学分野, 教授 (40280408)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 地盤改良 / バイオスティミュレーション / 小型コーン貫入試験 |
研究実績の概要 |
本研究では地盤中に存在する土着の微生物を利用するバイオスティミュレーション法を用いた地盤改良工法の開発を目的としている。昨年度は沖縄県石垣島など先島諸島の海岸から採取した試料を用いたが、本年度は沖縄本島の海岸で採取した2試料と、呉高専校内の花壇の土、呉高専周辺で採取されたまさ土の4種類の土を用いて模型実験を行い、改良効果について実験的に検討を行った。 沖縄の海岸の2試料では、試料を容器につめた後、培養液とカルシウムイオンを上面から散布し固化を行った。呉高専の土とまさ土では試料を容器につめた後、培養液を5日上面から散布し地中のウレアーゼ活性を示す微生物を増やした後、培養液とカルシウムイオンを上面から散布した。 また培養液中の塩化アンモニウムは沖縄の試料の実験と比べ、呉高専の試料およびまさ土は約1/4程度に減少させている。 実験の結果、事前に微生物の培養を行わなかった沖縄の2試料では試料上方のみが改良されているが、微生物の培養を行った呉高専の土とまさ土では、深さ方向に比較的一様に強度増加が見られ、事前に微生物を改良した方がより均質に改良できることがわかった。また呉高専の土とまさ土を用いた実験は、室温を30度に保ったケースと15~20度程度に保ったケースで行った。結果、どちらのケースもほぼ同じ程度まで強度が増加しており、本工法が通常の自然地盤でも適用できることがわかった。 さらに平成27年度に単離した菌株のDNA解析を行った。単離化が不十分であったが、過去にもバイオオーグメンテーション法で確認されたLysinibacillus系の菌株が確認された。また呉高専の土およびまさ土の廃液中の微生物のDNAメタ解析を行った結果、土壌固化菌であるSporosarcina sp.を含むFirmicutesd門の菌類が培養液を流すたび優占となっていくことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験部分は概ね順調に進んでいる。新たに作成した小型コーン貫入試験機により深さ方向の強度分布も明らかになってきている。また試験時の温度の違い、培養液の成分の違いによる影響なども議論できている。ただし、試験容器が十分大きくなく、圧縮試験用のコーン貫入試験後の試料の採取が不可能であったため、圧縮試験は実施できていない。これについてはコーン貫入抵抗値から一軸圧縮強度に変換できるため問題ないと考えている。 また当初計画には無かったが、研究を進め今年度新たに行った実験の廃液中の微生物のDNAメタ解析を行っている。これによりバイオスティミュレーション中の菌相の変化も捉えることができ、バイオスティミュレーション法を用いた地盤改良工法に寄与する微生物の特定が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は室温や培養液の成分割合など実験条件を変えながら実験を行い、より効果的な地盤改良工法の開発に向けた検討を行う予定である。 また培養時の温度が異なるケースの実験における廃液中の菌相の変化についても検討し、地盤固化に寄与する微生物の特定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にウレアーゼ活性試験からバイオスティミュレーション工法に利用できる菌株を単離化したが、菌株の単離化が十分でなく、コンダミが認められた。このため、DNA解析方法を菌株を同定する方法から菌相の変化を調べることができるDNAメタ解析に変更した。それに合わせ、実験に使用する試薬を購入するはずであったが、実験室内にあった試薬で実験が行えたため支出が抑えられた。ただし、平成29年度には試薬を購入する必要があるため、支出が増えるものと思われる。
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次年度使用額の使用計画 |
DNAメタ解析に使用する試薬を購入しなければならず、平成29年度には試薬を購入するための支出が増える。また、改良中の地盤の強度変化を調べるための実験を追加して行う予定であり、消耗品等の費用が必要となる。 一方、散布する培養液の量を空隙の2倍から1.2倍に変更したため、培養液用の試薬の使用量も抑えられる予定である。
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