研究課題/領域番号 |
15K06221
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
増田 幸治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 副研究部門長 (30344104)
|
研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
キーワード | 破壊強度 / 破壊実験 / 応力腐食 / 断層強度回復 |
研究実績の概要 |
岩石強度の時間変化メカニズムに対する水の影響について,前年度の成果と既存データを総合し,水が関与する応力腐食作用が岩石物性の時間変化の本質であるという作業仮説を検証するためのモデル構築を継続しつつ,その応用や課題遂行の過程で開発した実験技術についてとりまとめた. 応用例としては,誘発地震(注水等の人為的行為によって発生する地震)のリスク低減は重要課題である.現在開発されている地熱貯留層は比較的低温・低圧領域であるため脆性的な力学挙動を示し,誘発地震を引き起こすが,超臨界地熱貯留層では高温・高圧環境下のために,岩盤が延性的な力学挙動を示し,誘発地震の問題はないと考えられてきた.しかし,地下10km程度の地殻深部においても,微小地震が発生していることが観測されている.実際の開発前に,超臨界状態にある岩体内で発生する地震現象を理解しておくためには,室内実験による検証が有用な手段となる.地殻深部環境において,間隙流体によって誘発された地震のメカニズムや観測可能性を検証することが重要課題のひとつである.この成果は,地球惑星科学連合大会での招待講演で発表した. 実験技術に関しては,高圧ガスを使った高温高圧下での岩石変形実験技術を独自開発した.地下深部で起こっている現象を加速化して検証できる技術の開発についてまとめた.自然界で進行する現象の時間スケールは長く,人間の時間スケールでは観測事実が得られない.そこで,プロセスを再現する場合の壁となる環境条件(温度・圧力)の違いに着目し,熱力学的考察を基に,プロセスをスピードアップするための高温実験技術を開発した.水の状態を制御して実際の地下環境よりさらに高温状態を実現(温度と時間のtrade-off)した.この開発過程について,産業技術総合研究所が発行する論文誌「シンセシオロジー」(日本語および英語版)に公表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は初年度2015/10/21に追加採択された.初年度終盤より開始したので,当初は研究計画にあった実験は十分できなかったが,既存のデータの再検討も含めて検討をすすめた.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の採択が年度後半であったことより,初年度は当初計画通りの実施ができなかった.平成28年度以降は,既存のデータの再検討も含めることによって,実験データの不足を補い,岩石物性の時間依存性に関するメカニズムの考察や技術開発についてとりまとめることができた.今後は,当初目的のモデルの検証を実施する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本課題は追加採択(2015/10/21)のため,当初予定していた装置製作の設計製作を初年度に実施することができなかった.その関連費用が次年度以降の未使用分(の一部)となっていた.
|
次年度使用額の使用計画 |
計画の3年目で成果をとりまとめるため,既存の設備を使用し,既存の未解析データも使用することで当初の目的を達成することを目指す.解析のためのソフトウエアとモデル検討・情報収集のための研究集会出席に対し当初予定より多く支出する.
|