研究課題/領域番号 |
15K06229
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
楳田 真也 金沢大学, 環境デザイン学系, 准教授 (30313688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 河口 / 流域 / 砂浜 / 流砂 / 漂砂 / 汀線 / 砂州 |
研究実績の概要 |
河川・海岸域における土砂動態と地形変化の総合的理解を深めるため,(1)河川流域の長期的な土砂輸送量の推定,(2)河口周辺における洪水と波浪による地形変動解析,(3)砂浜海岸の中・長期的汀線変動特性と沿岸砂州に関する研究を行った. (1)河川から海岸への土砂流出のポテンシャルを評価するために,ダム堆砂量,河川地形測量+砂利採取記録,河川安定縦断形状理論および河床変動解析の4つの手法で,平年の土砂輸送量の推定を試みた.観測データの有無や欠測等による不確定性やデータの信頼性の問題を考慮して,年間の土砂輸送量の範囲を各手法で見積り,推定範囲が重なる値を求めた.河床材料の粒径分布の記録を利用して粒径集団別土砂輸送量を求めて,河口周辺海岸の砂と同程度の粒径の流出砂量を推定した. (2)河口から海岸へ流出した土砂の輸送先や堆積分布特性を把握するために,河口周辺の波・流れによる水の流動,土砂の輸送及び地形変化に関する数値解析を行った.測量データを基に作成した詳細地形を用いて,河口の水位,洪水によって形成された河口テラスの大きさや形状などの再現計算を行い,数値解析モデルの妥当性を検証した.洪水規模と河口テラスの発達の関係やテラスの侵食や砂州形成に与える波浪の影響について考察した. (3)上記の河川が主な土砂供給源である砂浜海岸を対象に,海岸管理者の測量データ等に基づいて統計的解析を行い,汀線の季節~数十年の変動特性を調べた.汀線位置の変化は,様々な時間・空間スケールの変動成分が含まれていることがEOF解析などから分かった.季節変動成分,20年以上の長期トレンド成分及び沿岸砂州の周期的沖向き移動に連動した成分の汀線の振幅や空間変化を評価した.また,同海岸に形成される複数列の沿岸砂州の周期的変動パターンのモデル化を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の主要課題である(A)河川から海岸への供給土砂量の評価,(B)河口周辺域における短期的な地形変化と土砂収支,(C)海岸の広域的地形変化の理解,に関する研究を同時に進めた. (A)研究実績の概要(1)の研究結果から,砂浜海岸の保全に関わる河川から流出する砂の量を数十年以上の河川観測・測量データに基づいて推定した.流出土砂量を4つの手法を用いて解析し,年間平均の土砂量推定の精度向上を図った.この結果は,最終年度に実施する(D)河口から海岸への土砂供給と地形応答に関する数値解析や土砂収支の分析に役立つ. (B)(2)の研究結果から,洪水によって河口周辺海岸へ短期的に急激に流出した土砂の供給先や侵食・堆積量,その後の波浪に対する海浜地形の応答特性をプロセスベースの数値解析モデルで検討した.観測データとの比較・検証を行い,洪水や波浪による短期的な河口周辺域の地形変動過程の再現に役立つことが分かり,最終年度の課題(D)に適用可能な解析手法を確保した. (C)(3)の研究結果から,広域流砂系の下流端部に位置する砂浜海岸の汀線の中・長期的な変動特性を明らかにした.また,沿岸砂州の周期的な移動パターンを簡単な代数式でモデル化し,最終年度に実施予定の海岸波浪・流れと地形応答の数値解析への利用を検討した.波浪などの外力の変化と汀線の前進・後退の相関関係や汀線の時空間的相関などを調べて,最終年度に実施する海浜断面の測量や漂砂観測調査にも役立つ知見を得た. (A)~(C)の研究成果の一部は土木学会の研究発表会でそれぞれ速報を発表した.また論文発表の準備も進めている.
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今後の研究の推進方策 |
広域流砂系の様々な時空間スケールの海岸・河川域の土砂動態及び地形変動の総合的理解を深めるために,(D)河口から海岸への土砂供給と地形変動に関する研究,及び(E)海岸波浪・流れと砂浜海岸地形の応答特性に関する研究を行う. (D)河川・海岸管理者から提供して頂いた河口周辺域の長期間の水理・地形測量データに基づいて統計的解析を行い,年間から数十年程度の河口周辺の地形変動の実態および川と海の様々な外力と地形変動との関係を明らかにする.解析には,(C)の研究で用いた手法に加え,外力と地形の応答関係の解析に有効な手法を導入する.また,日から季節の短期的な河口周辺の土砂輸送と地形変動に与える外力の影響に関しては,(B)の研究で準備を進めた数値解析モデルを利用して進める.河川と海岸の底質粒径の違いや構造物の存在を考慮して現象の再現性を高めつつ,河口からの土砂供給と周辺海岸の応答関係を検討する. (E)(B)(C)の研究結果などから,河口から離れ,海岸地形,構造物や底質などの条件が異なる広域の流砂系の下流端部に位置する海岸では,海浜変形の基本特性が異なり,波浪や海浜地形の影響が大きく,その他の長期的変動の要因も示唆された.そのため,長・短周期の波の作用を考慮した海浜変形解析を行い,前浜・後浜の地形変化の再現性に関するモデルの検証と波浪と海浜地形の影響について考察を行う.また,汀線の長期的変動の原因を明らかにするため,波浪以外の外力や人為的影響など様々な要因を考慮して,汀線変動との関係を調べるとともに,汀線変化の予測モデルの構築を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた物品が見積もりに比べ高くなったため,予算が足りず購入できなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画より謝金を減らして,現地調査に必要な機器を準備する.
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