研究課題/領域番号 |
15K06231
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
坂本 康 山梨大学, 総合研究部, 教授 (80126648)
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研究分担者 |
西田 継 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (70293438)
原本 英司 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (00401141)
田中 靖浩 山梨大学, 総合研究部, 助教 (50377587)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水文指標 / 地下水汚染 / 同位体 / 健康関連微生物 / 植物ウイルス / 糞便汚染源解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、水文学を新しい分野に展開するために、微生物情報・同位体情報を水文学に取り入れることがどの程度有効か、その限界はなにかを明らかにすることである。そのために、本年度は微生物指標の測定方法、解析方法の検討と、同位体の観測データの蓄積を行った。微生物指標としては、植物ウイルスで人間の食生活の指標であるトウガラシ微斑ウイルス、糞便汚染の指標である大腸菌ファージを個別に検討するとともに、遺伝子情報により微生物を網羅的に解析することも行った。トウガラシ微斑ウイルスと大腸菌ファージについては、自然水での測定に使うことができる測定方法を検討し、平成28年度以降の採水・分析の準備を整えた。具体的には、微生物の分析のために必要な濃縮方法、単離方法の問題点を検討し改良を行った。遺伝子情報による網羅的解析では、農業による土地利用に関する微生物指標を想定して、有機農法および慣行農法の農地からそれぞれ採取した土壌と浸透水の微生物相を解析し、比較した。この解析では、指標となりうる47種の病原性細菌(植物病原菌:8種、動物病原菌:39種)を抽出し、これらの全細菌に対する分布率は浸透水の方が大きいという、土壌と浸透水の相違を明らかにした。また、このうちの三種は土壌、浸透水の両者で検出され、土壌から浸透水に流出している可能性があり、人の健康リスクの要因にもなりうることを見出した。なお、有機農法および慣行農法という土地利用の相違による相違は明確にはできなかった。同位体情報については、微生物情報との関係づけのためには微生物汚染のある水を対象とすることがよいことから、途上国での採水と分析を継続的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は年度当初の計画を変更した部分があるが、この変更により、新しいこと、より役立ちそうなことを取り入れることができたので、全体では概ねよい進行状況と判断した。変更の趣旨と内容、利点は下記である。 微生物指標:年度当初は河川水を対象とした現地観測を主に計画していたが、河川水は流域からの流出の結果であることから、水質解析の困難さが予想された。これに対し、年度開始後に山梨県の研究所の協力が得られて、大型ライシメーターを用いた観測が可能になった。そこで、流出のもとになる水文ユニットプロセスである浸透に関しての検討を行うことができた。また、指標微生物については当初計画していた大腸菌ファージ等の単独の微生物の解析だけでなく、遺伝子情報による網羅的解析も試みることができた。 同位体指標:年度当初は微生物解析と同様に河川水等を対象として考えていたが、微生物解析で、より基本的な水文過程を扱うようにしたため、平成27年度は同時観測に拘泥しないようにした。そうすることで、両者を関連付ける基本データの蓄積のために、微生物汚染のある途上国での水での観測を行うことが時間的に可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始時には採水等が容易な河川水等を対象とすることを考えた。しかし、平成27年度の検討により、より基本的な部分、基本的な水文過程を少しずつ詰めていくことが、一見遠回りであっても成果が得やすいと判断できた。そこで、平成28年度以降は、河川水・地下水などを対象とした検討に縛られずに、並行して基本的な水文過程の検討も強化していくこととした。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の計画の一部変更に伴い、平成27年度の実流域での観測等を一部減らし、次年度以降に繰り延べたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定されている微生物指標の測定のための試薬等に用いる。
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