研究課題/領域番号 |
15K06232
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牛島 省 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (70324655)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 数値流体力学 / 圧縮性流体 / 流体固体連成 / 局所洗掘 / 並列計算 |
研究実績の概要 |
(1) 流速・圧力緩和手法を用いる低マッハ数圧縮性流体解法の提案 圧縮性流体の基礎式を用いて低マッハ数圧縮性流れを非圧縮性流体計算と同程度に高速に計算する数値解析解法を提案した.本手法では,SMAC系の非圧縮性流体計算で用いられる流速・圧力緩和手法を利用することで,音速に基づくCFL 条件に拘束されずに計算することを可能にした.さらに,保存形の質量保存則から有限体積法に基づいて密度を計算することで質量の保存性を高精度に満足させた.提案した手法を用いて,キャビティ内の壁面駆動流れおよび側壁面温度差により生じる自然対流現象を解き,妥当な計算結果が得られること,また既往の高マッハ数流れに対する数値解法より計算時間が大幅に短縮されることを確認した.
(2) 落下水流による個々の礫の運動を考慮した多相場並列解法 切欠き堰を越流して落下した水流により,下流側に平滑に敷き詰められた平均粒径約7 mm の礫群が輸送され,礫群層厚の変化,すなわち洗掘・堆積過程を計測する水理実験を行った.この水理実験を対象として,礫群を連続体として扱うのではなく,流体と約 16,700 個の礫1つ1つの力学連成や礫どうしの衝突を扱うことが可能な3次元固気液多相場の数値解法による大規模並列計算を行った.特に,本研究では 500 個の礫形状計測値に基づいて,代表的な 26 種類の形状を定め,これを四面体要素で表す礫の数値モデルを用いて,慣性テンソルなどの物性値や流体との相互作用を評価した.最初に,実験で用いた礫群の水中安息角を対象とした計算を行い,球形の礫モデルでは妥当な結果が得られず,本研究の礫モデルが有効であることを確認した.最後に,堰を越流した落下水流による礫群輸送の計算を行い,礫群の洗掘・堆積形状などの計測結果と定量的に比較し,数値解法の有効性を考察した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非圧縮性流体に関しては、3次元多相場並列解法において、形状の異なる固体を1万個のオーダで含む計算が可能となり、また実験結果との比較を通じてその有効性も確認できたため、研究は順調に進展している。一方、圧縮性流体と固体連成問題については、基礎方程式系の数値安定性などの問題から対応すべき課題が残されている。しかし、流速・圧力緩和手法を用いる計算手法を提案し、研究の見通しが得られる状況となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究では、剛体として扱われる固体と非圧縮性流体との連成並列計算法を検討した。平成29年度は、柔軟な固体である超弾性体を含む非圧縮性流体の3次元大規模並列計算法の開発を進め、数値実験等を通じて適用性に検討を加える予定である。また、圧縮性流体と固体との多相場解法や、熱的な連成を含む流体構造連成計算法の開発を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、本研究で利用する京都大学のスーパーコンピュータのリプレースに約半年の遅れが発生した。このため、スーパーコンピュータの利用負担金が当初予定していた金額より少なくなり、残額が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、京都大学に新規導入されたメニーコアシステム(Xeon Phi KNL)と、Xeon Broadwellのシステムという2つのシステムを利用し、今年度使用額を利用して研究を加速する予定である。
|