近年頻発化している局所的な集中豪雨の一因として都市化の影響を評価する必要があるが、その因果関係は依然として明らかにされていない。本研究では、降水の前段階である「雲」に着目し、都市化による土地利用の変化が雲の形成に与える影響について解明を試みた。松山平野を対象として、地上気温・湿度の空間分布、雲底高度の計測システムに加えて、日射量・雨量・気圧の空間分布を観測するシステムを新たに構築し、都市化と雲形成・降雨発生の関係について検討を行った。 この観測システムから得られた気圧の時空間特性について解析を行ったところ、松山平野の土地利用や地形的特徴が気圧の時空間変化の特性に影響を与えていること、それにより海陸風の変化の傾向をよく説明できることが示された。また、局所降雨の発生1時間前から当該地付近の気圧が上昇を始め、この気圧変化が積乱雲の発生によって説明し得ることが示された。 また日射量の稠密な時空間観測データの取得による雲のモニタリングの可能性についても検討を行った。太陽光発電量から全天日射量を推定する手法を都市スケール領域に適用し日射量空間分布の推定を試みた。快晴日であれば領域内のすべての領域で快晴であるとの仮定のもと、領域内の太陽光パネルの換算係数を一括して求める手法を導入した。この手法により、太陽光パネルから日射量推定値を得ることが容易となった。推定された日射量分布は全天カメラによる雲画像とよく合致しており、太陽光パネルから日射量の空間分布を推定することの妥当性が検証できた。 最後に日射量と雨量の関係を調べた。日射量と雨量に負の相関が確認できれば、太陽光パネル等により得られる日射量の空間分布の情報から地上雨量のモニタリングが可能となる。地上日射量を大気圏外日射量で除した晴天指数と雨量には負の相関があり、その傾向は太陽高度が高いときほど顕著になる結果が得られた。
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