昨年度までの研究により、観測データから推定される方向集中度はばらつきがあり、平均的には波形勾配によらず15程度となるのに対して、波浪推算では任意の海域、期間の情報が比較的簡単に得られ、波浪推算から得られる方向スペクトルをもとに算出した方向集中度(以降推算Smax)はばらつきがあるものの波形勾配別に平均値を求めると、合田ら1975が提案した波形勾配別のSmaxと近い値を示す傾向があることを明らかにしている。 本年度は、波浪推算モデルWAMにより算出される方向スペクトルから推定したSmaxがばらつきを有する要因および、波浪推算モデルにより算出される有義波高と有義波周期から得られる波形勾配から合田らの提案した方向集中度(以降理論Smax)に近い値を示す条件を明らかにすることを目的とし、波浪推算により得られる方向集中度の出現特性について再整理を行った。加えて波齢との相関についても整理を行った結果、鳥取における冬季季節風時には波齢とsmaxに相関が見られるものの、その他の地点では明瞭な傾向が見られなかった。推算結果の方向スペクトルから得られる方向集中度は、有義波高と有義波周期から推定される波形勾配別の合田らの方向集中度Smaxの分布と分布形状は良く似ており、50程度の条件では概ね同程度の値を推定可能であるが、20以下の風波条件では過小評価傾向であり、方向集中度が80を越えるような減衰距離の長いうねりについては過大な値を与えることを明らかにした。なお、本研究では違いの特性を明らかにしたが、合田らの提案値と波浪推算から算出される方向集中度のどちらが適切な値であるかについては更なる詳細な検討が望ましいといえる。
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