研究課題/領域番号 |
15K06241
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
藤村 和正 明星大学, 理工学部, 教授 (70229037)
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研究分担者 |
鼎 信次郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (20313108)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 貯留関数式 / パラメータ特性 / 洪水流出解析 / 長期水循環解析 / 全球気候モデル |
研究実績の概要 |
現在と将来における治水対策および利水対策の適切な実行を念頭に置き,河川流量の算定精度向上のため,多くの流出モデルの基礎式として使用されている貯留関数式に含まれるパラメータの特性解明を進めている。平成28年度は,1)洪水流出を対象とした貯留関数パラメータの性質把握,2)早明浦ダム流域を対象とした将来気候値を基にした長期水循環解析,を主に進めることができた. 1)については,自然条件である気候および地質が異なる四国地方,東北地方,北海道地方の5つの流域において洪水流出解析を行い,最適パラメータを探索し,流域毎に整理してパラメータ特性を考察した.その結果,これまで独立したパラメータとして見なされていた指数pと係数kには相互関係があり,指数関数式で表現できるp-k曲線の存在を明らかにすることができた.解析結果を整理して,国内学会の研究発表会において公表するとともに,リトアニアで開催された国際会議Nordic Water 2016で発表し,さらに,査読付き論文に投稿して受理され掲載された(土木学会論文集G(環境)). 2)については,四国地方の早明浦ダム流域を対象に,4つの全球気候モデル(MIROC3.2(hires),MIROC3.2(medres),MRI-AGCM3.1S,MRI-AGCM3.2S)の将来気候値(A1B, 2080年~2099年)の公開されている月単位の係数を基にして1時間単位で20年間の長期水循環解析を行い,流出量の月平均値と年水収支量について考察した.その結果,毎月の月流出量の増加傾向,地下水流出量の1月から5月にかけての増加傾向,直接流出量の8月~9月にかけての顕著な増加傾向をシミュレーションにより表すことができた.これについての研究成果は,国内学会の研究発表会において公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Web等で公開されていない水文資料を河川管理の事業所に赴き,提供をお願いし入手できたことから,解析に必要な資料の整備がはかどった.ただし,流出解析をまだ終えていない流域や将来流出予測に必要な気候モデル値の出力を終えていない流域が残っている.一方で,解析プログラムの修正,動作確認を行い,洪水流出解析,長期水循環解析と将来流出予測の一連の解析の実行プロセスを確実にしているので,流出解析をスムーズに進められる状態にある.全体として,解析結果を順次整理し,国内外の学会で公表している段階にあるため,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,早明浦ダム流域において気候モデルの出力値を反映させた将来流出予測を予備的に実行し,結果を得ているので,平成29年度は,本格的に6流域全体の全球気候モデル値を出力し,将来流出予測を進めていく.解析を終えて整理された研究内容を順次,学会等で公表し,研究全体の成果をまとめていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にGISソフトのグレードアップ版購入を保守契約の関係から費用削減を考え当該年度(平成28年度)の使用額が生じ,その繰り越しが影響して次年度(平成29年度)使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
国内外の学会における研究成果の公表の機会が増えたので,学会発表のための旅費に使用する.また,残された資料整理の作業のための研究補助員による人件費,GISソフトのバージョンアップのための費用に充当する予定である.
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