研究課題
本研究では,洪水時の流れと掃流力および掃流砂量の関係を,移動床実験水路(画像解析による鉛直流速分布・掃流砂計測)および現地観測(掃流砂採取,超音波ドップラー流速計)の実測データに基づいて明らかにし,洪水中の新しい掃流砂量計測技術の提案を目的としている.初年度の平成27年度には,①移動床水路における掃流力評価法および②掃流砂採取器の改良と洪水時において検証を行った.前者では画像解析により水路中央部の鉛直流速計測を試み,異なる水理条件下において計測できたものの,水中に投入するトレーサーの量と光源の設定の最適化の課題が残った.後者については,実河川において4000m3/s程度の洪水時に掃流砂採取器を投入し,表面流速3m/s,水深5mの流況下においても採砂器が着床することを確認し,従来の性能から大幅に改善することができた.平成28年度には,移動床水路において技術的な課題であった計測装置のチューニングが解決し,異なる水理条件でデータ取得を可能とした.また,下流端に堆積した土砂量を計測する手法として写真計測を適用し,十分な精度を有することを確認した.また,現地観測においても石狩川の融雪出水を対象として実施し,超音波ドップラー流速計で得られた河床面移動速度から算定した掃流力と実測した掃流砂量の関係について明らかにした.これらの成果により,移動床水路および実河川においても当初想定した計測技術を確立することができ,最終年の検討に向けた準備が整ったといえる.
2: おおむね順調に進展している
移動床水路における画像解析を用いた鉛直流速分布計測技術については,初年度の技術的な課題であった計測装置のチューニングを最適化し,データを取得できるようになった.また,水路下流に堆積する掃流砂量の時間変化を簡易に計測するために写真測量技術を適用し,有効性を確認した.現地観測においても石狩川の融雪出水時において,開発した採砂器の捕捉性能を検証できた.最終年度となる平成29年度は,これらの成果を移動床水路実験および現地観測に適用し,流れと掃流砂量との関係について考察できる体制が整った.
移動床水路では,河床材料の変更を予定しており,種々の河床材料,水理条件における実験データが得られる.また,改良した掃流砂採取器を複数河川への適用を計画しており,各河川において検証用のデータの取得が可能となることから,本課題の進展が期待できる.
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土木学会論文集B1(水工学)
巻: 73 ページ: I_535 -I_540
River Sedimentation, Proceedings of 13th International Symposium on River Sedimentation, ISRS
巻: - ページ: 1274-1280