研究課題/領域番号 |
15K06253
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
近藤 光男 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (10145013)
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研究分担者 |
福島 明子 四国大学, 経営情報学部, 講師 (60514081)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 地域間交流 / 従業者数推定モデル / 計量経済モデル / シミュレーション |
研究実績の概要 |
今回の研究課題の交付内定をいただいたのが平成27年10月22日であったため、研究作業の開始が若干送れたが、データ収集等は平成27年度当初から行っていたこともあり、「地域間交流の促進が地域活性化に及ぼす効果の検証」という課題について実績をあげることができた。 1.地域間交流の促進が地域の従業者数に及ぼす効果 地域間交流を地域を訪れた人数で捉え、一方、地域間交流の促進は主に地域の第3次産業に大きな影響を及ぼすと考え、その効果を計量するための指標として第3次産業従業者数を取り上げた。これらの指標の関係を、タイムラグを考慮して、2005年の地域の訪問者数と2010年の地域の第3次従業者数の関係を分析したところ、地域間交流量は地域の第3次産業の従業者数に影響を及ぼしていることが明らかになった。そして、この関係を非線形式を用いてモデル化することができた。 2.地域間交流の促進が地域活性化に及ぼす効果を計量するためのシミュレーションモデルの構築とその適用 第3次従業者数を含む地域の社会経済指標や交通条件を表す変数を用いて、地域間交流量を推計するためのモデルを構築した。このモデルと地域間交流量を用いて地域の第3次産業従業者数を推定できる上記の1.で作成したモデルを同時に組み立てると、計量経済モデル体系のシミュレーションモデルとなる。続いて、このモデル体系を用いて、動学的なシミュレーションにより、地域間交流を促進するための交通政策が将来の地域の産業の動向に及ぼす影響を分析することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域間交流量を計測するためのデータとして、1999年、2005年および2010年に調査が行われた全国道路交通センサスデータを用いる予定であった。ところが、2010年の調査は平日の交通流動のみの調査であったため、地域間交流を分析するに当たって、重要な休日のデータがないため、2010年の分析はあきらめざるを得なかった。そこで、平日および休日の両方のデータが利用できる1999年と2005年の2時点のデータを駆使して目的達成を試みた。分析的には問題は無く、地域間流動の推移、地域間交流が地域の社会経済に及ぼす影響、そのメカニズムの解明等についての成果はあったが、地域間交流の直近の実態を十分把握できなかったところに課題が残っている。 その一方で、研究実績の概要にも記述したが、地域間交流の促進が地域活性化に及ぼす効果を計量するための計量経済モデル体系のシミュレーションモデルの構築とその適用ができたことは、予定にない成果であった。この成果は、次年度以降につながるものである。 以上のことから、研究課題の交付内定をいただいたのが平成27年10月22日であったにしては、今後につながる多くの知見も得ることができ、おおむね順調に進展してると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新しく見直された国土形成計画では、「対流が生み出す活力ある国土」をつくっていくことが大きなテーマになっている。対流とは、「多様な個性を持つ様々な地域が相互に連携して生じる地域間のヒト、モノ、カネ、情報の双方向の活発な動きであり、対流それ自体が地域に活力をもたらすとともに、多様で異質な個性の交わり、結びつきによってイノベーション(新たな価値)を創出するものである。」とされている。このことから、活発な対流を引き起こすためには、多様な個性を持った地域をつくり上げることが求められる。何故なら、多様な個性を持った地域間では、活発な交流(対流)が生まれるが、同質な地域間では活発な交流(対流)が期待できない。 新たな国土形成計画の促進に貢献するため、次年度は研究面でもこのことを念頭に置いた「地域の多様性を考慮した新たな地域間交流(対流)モデルの構築」を行う。これは、当初の研究課題に加え、極めて重要な課題であると考えている。研究の目的は、「多様な個性を持った地域間では活発な交流(対流)が生まれるが、同質な地域間では活発な交流(対流)が期待できない。」という仮説に基づいた新たな地域間交流モデルの構築することであり、内容的には、新たな対流の概念では、地域間の多様性が対流に影響を及ぼすとの前提であるので、出発地と目的地の魅力度(個性)が同質であれば対流は小さいが、出発地と目的地の魅力度(個性)に大きな違いがあれば活発な対流が期待できる。このことを反映した新たなモデルをつくることが主な取り組みである。つまり、出発地と目的地の魅力度(個性)の違いを、明示的に交流の要因として組み込んだモデルの構築である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の使用については、本年度は、研究課題の交付内定が平成27年10月であったため、当初の計画どおり研究を遂行することが困難であり、予算をすべて使用することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も、今年度同様、大きな設備は必要としておらず、パソコン等の少額の物品費、消耗品(パソコン関係、文房具等)の他、研究資料収集および研究成果発表のための旅費が必要である。また、大量のデータを扱い、各種の統計分析を行うことから、大学院学生の研究協力謝金を予定している。平成28年度は、研究計画に対し、平成27年度の残額と次年度に与えられた予算を有効に使用し、研究成果をあげていきたい。以上のような使途で、研究代表者と研究分担者1名で研究を遂行する。
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