研究課題/領域番号 |
15K06253
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
近藤 光男 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (10145013)
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研究分担者 |
近藤 明子 四国大学, 経営情報学部, 講師 (60514081)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 地域間交流 / 認知度モデル / 対流促進型国土 / 地域の多様性 / 地域間交流モデル / シミュレーション |
研究実績の概要 |
2年目である平成28年度は、昨年度の成果を踏まえて、2つの点で成果をあげることができた。1つ目は、新たな要因として、訪問先の地域の認知度を、地域間交流モデルに組み込むことを目的として、地域の認知度とその影響要因に関する計量的な関連を分析するとともに、認知度モデルを構築することができた。2つ目は、2015年8月14日に閣議決定された新たな国土形成計画において、国土の基本構想として提唱された「対流促進型国土」の形成に資する政策情報を提供できる地域の多様性を反映した地域間交流モデルが構築できたことである。 (1)地域の認知度とその影響要因との関連分析、および認知度モデルの構築 観光・娯楽目的の地域間交流における訪問先の認知度に及ぼす影響要因とその度合いを明らかにすることを目的として、関連分析を行った。その結果、「観光・娯楽情報誌の情報」、「ウエブサイトの情報」、「観光・娯楽資源の歴史」、「居住地から訪問先までの距離」の4つの要因を用いて、認知度モデルを構築することができた。さらに、モデルを用いたシミュレーション分析も行うことができた。これらの成果により、従来の地域間交流モデルを、新たな説明要因として認知度を明示的に組み込んだモデルに発展させる道筋を示すことができた。 (2)地域の多様性を反映した地域間交流モデルの構築 これまでに構築した地域間交流モデルは、地域の魅力度(個性)について、出発地の魅力度(個性)を考慮せず、目的地のみの魅力度(個性)だけを要因として、交流を説明していた。新たな対流の概念では、地域間の多様性が対流に影響を及ぼすとの前提があることから、従来のモデルを改良し、出発地と目的地の魅力度(個性)の違いを明示的に交流の要因として組み込んだ新たなモデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域間交流量を計測するためのデータとして、1999年、2005年および2010年に調査が行われた全国道路交通センサスデータを用いる予定であった。ところが、2010年の調査は平日の交通流動のみの調査であったため、地域間交流を分析するに当たって、重要な休日のデータがないため、2010年の分析はあきらめざるを得なかった。そこで、平日および休日の両方のデータが利用できる1999年と2005年の2時点のデータを駆使して目的達成を試みた。分析的には問題は無く、地域間流動の推移の分析、地域の多様性を反映した地域間交流モデルの構築など、研究の進展があった。 一方、2015年8月14日に閣議決定された新たな国土形成計画において、国土の基本構想として「対流促進型国土」の形成が重要課題であることが提唱された。このことによって、研究面でも、「対流促進型国土」を形成するための政策情報を提供できる地域の多様性を反映した地域間交流モデルの構築という新たな課題が発生した。平成28年度は、この新たな課題に取り組んだ。この新たな課題については、平成27年度の実施状況報告書の「今後の研究の推進方向」に記載しているが、この研究課題について、一定の成果をあげることができた。この研究成果は、当初の研究計画に予定になかったものの、最新のわが国の国土政策に対応するものであり、平成29年度以降につながるものである。 以上のことから、平成28年度は、今後につながる多くの知見を得ることができ、おおむね順調に進展してると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新しく見直された国土形成計画では、「対流が生み出す活力ある国土」をつくっていくことが大きなテーマになっている。この国土づくりに政策的に貢献できるような成果を提供できる研究を進める。これは、当初の研究課題に加え、極めて重要な課題であると考えている。そして、平成28年度は、そのための第一歩である「地域の多様性を考慮した新たな地域間交流(対流)モデルの構築」を行うことができた。平成29年度は、この新たなモデルの実効性、適用可能性を検討するとともに、その後、モデルを用いた政策シミュレーションを進める。政策シミュレーションの成果は、まさに、「対流が生み出す活力ある国土」をつくっていくための政策情報になる。 この課題に加え、基礎的な研究に分類されるが、「多様な個性を持った地域間では活発な交流(対流)が生まれるが、同質な地域間では活発な交流(対流)が期待できない。」という、新たな国土形成計画の基本的な仮説の検証を行う。なお、対流とは、「多様な個性を持つ様々な地域が相互に連携して生じる地域間のヒト、モノ、カネ、情報の双方向の活発な動きであり、対流それ自体が地域に活力をもたらすとともに、多様で異質な個性の交わり、結びつきによってイノベーション(新たな価値)を創出するものである。」とされている。具体的な分析としては、四国を対象とし、市町村を分析単位として、多様性という観点から地域を分類し、多様性がみられる地域間の交流量と多様性がみられない地域間の交流量を比較し、仮説の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の使用については、初年度(平成27年度)は交付内定が平成27年10月であったため、予算をすべて使用することができなかった。今年度(平成28年度)分については、研究の進捗が順調であったため、予算もほぼ予定どおりに消化できた。2年間を通してみると、初年度分の繰り越しの影響が残っている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、平成28年度同様、大きな設備は必要としておらず、パソコン等の少額の物品費、消耗品(パソコン関係、文房具等)の他、研究資料収集および研究成果発表のための旅費が必要である。また、大量のデータを扱い、各種の統計分析やシミュレーション分析を行うことから、大学院学生の研究協力謝金を予定している。平成29年度は、研究計画に対し、与えられた予算を有効に使用し、研究成果をあげていきたい。以上のような使途で、研究代表者と研究分担者1名で研究を遂行する。
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