研究課題/領域番号 |
15K06255
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
星野 裕司 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 准教授 (70315290)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 河川空間 / 気候変動 / 内水氾濫 / コペンハーゲン / 益城町 / 震災復興 |
研究実績の概要 |
当研究は,自然災害の頻発による防災的課題と人口減少などの地域的課題を統合的に解決するために,様々な事例について,(1)行政の意識・政策的枠組み,(2)利用者の意識・行動変化,(3)空間デザイン,以上3つの観点から考察することを目的としている。2016年度は,(1)及び(3)に関して研究を行った。 (1)に関しては,気候変動適応に関して先進的な取り組みであるクラウドバーストプランを行っているコペンハーゲンにおいて,調査を行なった。行政資料調査とコペンハーゲン市担当者,建設コンサルRamboll担当者にヒアリングを実施し,クラウドバーストプランの展開プロセスと計画支援に関する考察を行い,気候変動適応策を推進していくにあたっての戦略性を明らかにすることを目的とした。その結果, クラウドバーストプランの戦略性は,時間軸を意識した段階的整備のみならず,実効性を高めるために,横断的な組織体制や新たな経済手法を法改正によって確立したという点であることが明らかとなった。加えて,計画を記述するタイポロジーは,都市スケールで計画立案する簡便さを確保しており,個別の空間を設計する際の自由度と現場レベルでの調整の余地にもつながっていることが明らかとなった。 一方(3)に関して,益城町では,平成28年熊本地震によって大きな地盤沈下が生じ,約2か月後の大雨では広域的な水害を受けた。益城町の復興にあたっては,地震被害からの復旧とともに,水害対策が重要となる。一方,当地域は,従来より湧水の多い土地であったが,地震後は湧水箇所も増加している。そこで当年度では,水害被害報告や益城町の水路や河川・交通計画・地域性といった情報を分析整理し,その結果に基づいて,益城町復興に資する多機能性ある都市基盤整備の一環として,水害対策と湧水を活かしたまちづくりの融合を目指した一提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度は,熊本地震の影響により,年度当初は研究を進捗させる環境ではなかったが,夏以降,研究を進めることができた。その結果10月には,研究計画に位置付けていた欧州事例調査を実行することができた(目的(1))。一方,熊本地震後に発生した内水氾濫という災害を時宜を得るとともに地域性の高い事例になると考え,その対策に寄与する研究に着手した(目的(2))。これらの作業によって,「包括的河川デザインの事業マネジメントと市民の行動変化に関する研究」を順調に進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は,研究計画の最終年度となるため,研究を総括していくことが必要となる。そのため,二つのアプローチに基づき,目的(1)~(3)までを統合的に考察していく。一つ目のアプローチは,申請者らが直接関わっている白川の河川整備や,欧州,コペンハーゲンの事例に基づいて,3つの側面(目的)の関係を整理していく。もう一つのアプローチは,2016年度にスタートした益城町における水害対策の実践的研究を2017年度も推進し,アクションリサーチ的手法に基づいて考察を行なっていく。以上2つのアプローチを統合し,「包括的河川デザインの事業マネジメントと市民の行動変化に関する研究」の基礎的知見を整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本地震により,予算を消化しきれなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度となるため,等予算を優先的に消化していく。
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