研究課題/領域番号 |
15K06258
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金子 雄一郎 日本大学, 理工学部, 准教授 (40434112)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脆弱性 / 都市鉄道 / 首都直下地震 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,研究代表者が過去に構築した都市鉄道ネットワークの脆弱性評価手法について,大規模地震対策の観点から複数リンクの途絶に対応できるよう改良を行った.そのうえで,首都直下地震の発生を想定して,東京圏の鉄道ネットワークを対象に脆弱性の評価を行った.具体的には次のとおりである. まず,内閣府の「首都直下地震モデル検討会」において,最新の科学的知見に基づく巨大地震モデルを用いた震度分布データ(250mメッシュ単位)が公表されていることから,このデータ(全14パターン)を入手し,GIS(地理情報システム)上で鉄道ネットワークとオーバーレイさせた. 次に,複数リンクの途絶事例として,高架橋及び橋梁を含むリンクが途絶した場合を想定して,鉄道ネットワークの脆弱性の評価を行った.具体的には震度分布パターンごとに,震度6強以上の地域に含まれるリンクのうち,高架橋及び橋梁の有無をGoogleMap等の機能を用いて確認し,これらのリンクが途絶した場合の脆弱性指標値を算出した. その結果,14パターンの震度分布のうち,都心直下地震(西部,東部,南部)の3つのパターンで指標値が高い,すなわち途絶による影響が大きいことが明らかになった.また,リンク途絶による移動不可能なOD交通量の割合を算出した結果,全体的に途絶リンク周辺ゾーンでは移動不可能な割合が高いものの,代替経路が存在する場合,割合は低下する傾向が見られた.さらに,全14パターンの割合の平均値(各パターンの発生確率を同一と仮定)を算出した結果,埼玉県南部,川崎市,横浜市などの東京外縁部において,移動不可能な割合が高いことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度については,当初予定していた首都直下地震の震度分布データ(全14パターン)を入手でき,かつ重要構造物である高架橋及び橋梁を対象とした脆弱性分析を行えたことから,おおむね順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では,都市鉄道ネットワークの脆弱性に関する研究については,平成27年度に対象とした高架橋及び橋梁以外の土木構造物である盛土及びトンネルについても,同様の評価を行う予定である. また,研究代表者が過去に開発した都市鉄道ネットワークのOD間接続性評価システムに,震災時の鉄道利用者の行動特性や被災した施設の復旧のための資機材・要員の制約,運転再開した路線の容量制限を組み込む改良を行ったうえで,東京圏の鉄道ネットワークへ適用する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は,成果発表が東京都内での1回であったことから,旅費の使用額が当初予定より低くなった.また,平成28年度の研究において,分析用のパソコン等の物品費が予定より高くなる見込みであることから,27年度の助成金の一部を繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度において,遠方での成果発表のための旅費,及びパソコン等の物品費の購入に使用する計画である.
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