都市の重要インフラである鉄道の耐災害性向上に資する知見を得ることを目的に,東京圏を対象として以下の研究を行った. (1)脆弱性評価手法の開発(平成27年度):都市鉄道ネットワーク上の複数のリンクが途絶した場合の脆弱性を評価する手法を開発し,首都直下地震の想定震度分布データ(全14ケース)を用いた分析を行った.その結果,都心直下や周辺部を震源とするケースで特に指標値が高くなること,リンクの途絶により目的地へ移動不可能となるOD交通量の割合が,ネットワークの密度と深く関係していることなどが明らかになった. (2)OD間接続性評価手法の開発(平成28年度):鉄道の運転状況に基づきOD間の接続性を判定した上で,目的地への到達可能率を地域別に算定する手法を開発した.手法の特長として路線間の代替性を考慮できること,各リンクの容量制約を明示的に組み込んだことが挙げられる.そして震災時を想定した複数の運転再開シナリオを設定し,地域別の目的地への到達状況を比較した結果,開発した手法は多様な視点からの再開の優先順位付けが可能であることが確認された. (3)ビッグデータを用いた脆弱性評価(平成29年度):台風や降雪等の気象災害時における鉄道の脆弱性について,列車の運休・遅延が利用者へ及ぼす影響という観点からビックデータを用いて分析した.具体的には携帯電話の位置情報を基にした人口データである「モバイル空間統計」を用いて,大雪時における地域別滞在人口の平常時からの変化を1時間ごとに測定した.その結果,運行本数が大幅に低下した東京圏の西部・北部地域で滞在人口が平常時より大幅に増加した一方,東京都心部では滞在人口が減少したことが明らかになり,異常時における利用者の行動選択に資する情報提供のあり方について検討が必要であることが示唆された.
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