本研究では,前年度に引き続き,「アクセルオフ情報」や「推奨速度情報」を個々の車両に提供することによって,道路ネットワーク全体における二酸化炭素排出量の削減や交通流の円滑化を図ることができる情報提供システムの開発を目指した. 平成29年度には,これまでに開発した情報提供システムを組み込んだミクロ交通流シミュレーションとドライビングシミュレーションの連携を図ることに成功した.ミクロ交通流シミュレーションでは,「アクセルオフ情報」を提供した場合と,提供しない場合の車両一台一台の動きを再現し,この交通流中の一台の車両をドライビングシミュレータで運転するための統合環境の構築を行った.情報提供を受けている交通流の中を走行しながらの走行実験の結果,対象車両のみに情報を与えた場合にでも交通流円滑化や二酸化炭素排出量の削減効果は見られ,その効果は,交通流全体に情報を与えた時が最も大きいことが明らかとなった. 並行して,マルチエージョントシステムと強化学習を用いて,信号情報を受け取った際,信号交差点を青信号で通過する場合にはできるだけ規制速度に近い速度で通過し,赤信号で停止する場合にはできるだけ停止時間が短くなるような運転挙動を取るドライバーのモデル化を行った.このドライバーの混入割合が交通流に与える影響を分析した結果,混入率が約50%になると,全平均停止時間が大きく減少することがわかった.ただし,総平均旅行時間は大きく変化が無かったことから,無駄な減速や加速挙動が減り,交差点通過の円滑化が図られたことがわかった. 以上のように,実際に近い交通環境においても,「アクセルオフ情報」や「推奨速度情報」の提供によって,交差点接近時の無駄な運転挙動を減らすことができ,その結果,エリア全体の道路ネットワークでの二酸化炭素排出量も減少することがわかり,地球温暖化防止の一助になることがわかった.
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