自転車通行環境の整備をおこなっても、通行ルールを遵守した利用がなされなければ、現実的な道路上における安全性は確保されない。そこで、自転車通行環境の安全性評価においても、整備状況に応じた利用者の通行方法の遵守状況を把握し、これらを内包した評価方法の構築をおこなうことが必要である。 そこで、平成29年度には、各地の自転車通行環境の整備事例となる道路区間において、自転車および他の交通主体(歩行者・二輪車・自動車など)の通行位置の観測調査をおこない、通行ルールを遵守した利用がどの程度なされているかを把握した。具体的には、整備状況と利用者の通行位置の遵守状況との関係をデジタルビデオカメラを用いた観測調査によって定量的に把握し、どのような整備方法が、利用者の遵守率を高めることができるのかについて検証をおこなった。 さらには、平成27年度~平成29年度の研究成果を取りまとめて、利用者の通行方法の遵守状況を内包した自転車通行環境の安全性評価方法を構築した。具体的には、各種の自転車通行環境の整備方法に対して、現状の利用者の遵守状況にもとづく安全性、利用者が通行方法を遵守して利用した場合の安全性をそれぞれ評価することにより、ハード面での自転車通行空間の整備による安全性の向上効果と、ソフト面での利用者の適切な誘導や交通安全教育による安全性の向上効果との定量的評価をおこなった。これらにより、自転車の専用空間(自転車道)、歩行者との共存空間(歩道)、二輪車・自動車との共存空間(車道)などの、異なる自転車通行環境での安全性を相互に定量的に比較できる評価指標の提案をおこなった。
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